▼未完成

DayBreak【本編沿い】【未完成】

 

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【DayBreak】

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ白になった………

 

 

なんで?なんで?なんで?

 

空間識別能力が働かなくなった頭。

 

代わりに……疑問しか浮かばない。

 

 

『何も心配いらないよ』

 

 

頭一つ分、背の高い彼の顔を見上げる。

 

柔らかな翠の瞳が、逆光の中で濃く映る。

 

いつものとおり………頭を軽くぽんぽん叩いてくれて……そっとキスしてくれて………

 

粉雪が触れるような………柔らかな……溶けるような……キス

 

 

なのに…………

 

なぜ、あなたのからだからはたくさん管がでているの?

 

 

.

 

 

 

………潜行しすぎだ』

 

 

アスランはちょっときつめに言って、キラを引き止めた。

 

『そう?』

 

『………そこまで無鉄砲に進む軍人も珍しいよ………安全だとは言えてないんだから』

 

思わず、半分呆れた声で咎めてしまうのは……長い付き合いだから。

 

『………そうだね』

流石、アカデミーを首席で卒業しただけあるなぁ………と呟き声をレシーバーが拾う。

 

………好きで首席をとりたかったわけではないんだけど………

 

代わりに軽く息を吐いて、気持ちを平静にする。

 

、そこの扉開いてないよ』

 

流石に………また言われるのはごめんだ……と思ったのか……ドアノブに手をつける前に、キラはアスランに声をかける。

 

『プラスチック使おう。罠がはってあったらいやだし』

 

腰のバックパックのジッパーを開ける。

 

様々な破壊工作道具が顔を出す中で、必要な物を選別していく。

 

『そうだね』

 

返事をしながら………キラは爆弾を取り付ける位置を予測して、その周りの瓦礫をどけはじめた。

 

ドアノブにプラスチック爆弾をセットし離れる。
軽い音がし、ドアが半開きになった。

 

半開きのドアから、頭だけ入れて、中を覗いてみる。

 

 

.

 

 

 

 

天井まで伸びたキャビネットが部屋を埋め尽くしている。まるで迷路のようだ。

 

『………酸素は……やっぱり抜けてそうだね………』

キラは呟く。

 

キャビネットの中には、書類と、ガラスに入った液剤、モジュールと………棚には詰め込むだけ詰め込まれていた。

 

一部の棚からは………詰め込まれた書類の圧力に負けてしまったか………
それとも、他の要因でか………キャビネットの引き戸の強化ガラス部分が割れてしまい、書類が雪崩のように落ちた形跡もあった。

 

 

.

 

 

 

サーチライトで照らしながら、部屋内の様子を探りつつ、物色する。

 

無重力空間を物語るように……書類がふわりふわり舞っていたり、不必要な程の塵や埃。

 

乱反射をむやみに起こしていくサーチライトも………どちらかと言うと頼りない一品だった。

 

結局、ひとつひとつ、灯りの下で自ら顔を近付けて確認する二人。

 

『何もないようだけど?』

 

大方の確認を終えたキラは、アスランに伝える。

 

レシーバー越しのいつもの声に、危険物は発見されなかったとの意思を感じる。

 

 

.

 

 

 

でも………

 

『うん………この部屋……』

 

 

何か………胸につかえる………

 

 

『どうかしたの?アスラン?』

 

言葉の語尾を濁す親友に、問い掛ける。

 

問い掛けに………ゆっくりと答えるアスラン。

 

 

『……夢で……みた……ような……』

 

『夢?』

 

『あぁ……』

 

 

囁くような………はっきりしない口調………彼らしくないな……とキラは思う。

 

思わず、場の空気を変えようと、明るく聞いてみる。

 

『最後まで思い出せる?』

 

 

.

 

 

 

レシーバーから聞こえて来たのは、キラの声とアルミキャビネットの扉を開ける音。

 

………また……むやみに開けて………

 

そういうところが………最愛の彼と双子の姉を彷彿とさせる。

 

『…どうかな?』

 

俺は二つの意味で苦笑いしながら答えた。

 

確か………このあとに続くのは……赤い霧?

 

 

思い出そうとしなくても………何故か浮かんできた情景。

 

でも………それは………まだ………何かかはわからない………。

 

思い過ごしかも………しれないし。

 

アスランは……思い過ごしという楽な選択肢を選んだ。

 

まだ……調査は始まったばかりだったから、余計な意識を割きたくないという思いが先行したからだった。

 

 

.

 

 

 

 

『ねぇ………アスラン。これってなんの部品?』

 

 

合流した二人。

 

キラは相変わらず、無防備に扉を開けていたらしい。

 

『………どこにあった?』

 

見慣れない形状に眉をひそめてアスランはキラに尋ねる。

 

『ここのキャビネットだけど………』

 

他のキャビネットと変わらないから……対した重要物には見えない。

 

『………あんまりあちこち触らない方がいいぞ』

 

『………』

 

胸騒ぎも手伝って、語気を強めてしまった。

 

少し……不貞腐れたキラは元のキャビネットに戻そうと扉に手をかけた。

 

相変わらず埃っぽい部屋内で、ライトが乱反射する。

 

扉の内側で、赤い何かが一瞬反射したのを、アスランは瞳で捕えた。

 

 

思い………出した

 

 

.

 

 

 

 

アスランはキラの手を力一杯引っ張った。

 

『扉の外に早く!!!』

 

『アスラン!?』

 

背負ってた推進器をオンにして押し付け、キラの推進器もオンに切り替えた。

 

みるみるキラと距離が離れていく。

 

進行方向背面のまま……飛んで行くキラ。

 

キャビネットにぶつかる音が遠くなっていく。

 

 

『アスラン!!!』

 

 

レシーバーから焦った声と、何かにぶつかっている音が聞こえる。

 

もう、キラを視認することは出来ない。

 

胸に安堵を抱かせて、アスランは床を蹴り上げる。

 

俺も早く少しでも離れなくちゃ………確か、このあとどこからか爆発……して………

 

 

.

 

 

 

 

『ぅ……』

 

 

どこかにぶつかって止まったみたいだ。

 

意識をはっきりさせたくて、頭をおもいっきり振った。

 

宙には紙やガラス片が舞い、黒い煙が視界を遮っている。

 

『アスラン?』

 

レシーバーは壊れてしまったのだろうか?何も聞こえない………

 

自らの体内を流れるリンパ液の音がリアルに聞こえる。

 

 

右手を動かすと、傍らに落ちているアスランの推進器………

 

そうだ、爆発直前に渡されたんだ。

 

探さなきゃ………絶対巻き込まれている!!!

 

 

今……キラの耳に響くのは………自分を動かす心臓の鼓動のみ。

 

 

.

 

 

 

 

立ち上がって爆発の起こった扉の向こう側に行く。

 

舞い上がった埃と、何かが燃えて発生した煙で、視界がとれない。

 

手首のサーチライトをつける。

 

 

乱反射もしてくれない……。

 

 

レシーバーからは耳をどんなに傾けても、僕の心音しか聞こえない。

 

『…アスラン…』

 

声が出ない………喉が鳴る

 

 

………口の中の急激な渇き

 

 

………この不安は……何?

 

 

.

 

 

 

吹き飛んだキャビネットで、さらに破壊された扉を擦り抜ける。

 

ガラスが吹き飛びフレームのみになったキャビネット……折り重なったキャビネットは書類やらシリンダーやらを吐き出し続けている………

 

 

どこにいるんだ……

 

 

ライトだけしか頼れないのか………

 

 

足にまとわりつく書類………

 

 

宙に浮かぶ細かな瓦礫………

 

 

正体不明の液体………

 

 

光に透けると色を浮かべるから………純粋な精製水ではないことが用意に推測でき、触れないように躰を縮める。

 

視界に浮かぶ破砕されたダストをどけようと、キラは空に手を伸ばす………

 

 

?!

 

 

ライトに照らした煙の色がここだけ……違う……

 

 

あ……赤………

 

 

アメジストの瞳が……大きく開き……

 

『あ……すらん……』

 

まだ、親友の姿を見つけられないキラは瞬きすら出来ず………

 

何かが肩にぶつかる。

 

反射的につかんでライトの前にかかげる。

 

『ぁ……ぁ………』

 

僕と同じグローブ、僕のと色違いのスーツ………

 

 

僕を力一杯引っ張った右手……

 

 

だけ………?

 

 

.

 

 

 

 

 

 

どうやって廃棄衛星から脱出したのか覚えていない。

 

探索艇に着く迄すら………

 

 

 

 

 

目を閉じて浮かぶのは赤い霧の中に浮かぶアスランだけだった……

 

 

.

 

 

 

『止血を!!!早く!!!』

 

キラが持ち帰ってきたアスランは生きているのかさえわからなかった………

 

 

切断された右腕を氷の中に入れ、細胞劣化を少しでも押さえる。

 

焼け焦げ、裂けてしまったパイロットスーツ………べろんと剥けてしまった皮膚の下で骨が露出している右足を止血する。

 

 

………(『何があるか……わからないから……な……』)………

 

 

用心深い彼が翠の瞳の奥で笑いながら準備した血液パウチ。

 

その……パウチも全て使った……

 

 

あとは……何をすれば……

 

 

.

 

 

 

『キラ』

 

 

手を握られハッとする。

 

ペールブルーの瞳から涙が絶え間なく流れている。

 

『ラ……クス……』

 

 

頭が働かない………

 

 

『何……時間……たったの?』

 

キラの問いにラクスは手を握り返す……

 

『まだ手術が始まって30分しかたっていませんわ』

 

『まだ………』

 

血塗れのパイロットスーツのままだ……僕………

 

……………には……』

 

キラの虚ろな視線を……涙を流しながらラクスは受けとめる。

 

『連絡……しましたわ』

 

『………ありがとう』

 

再び……キラは俯いた。

 

 

パイロットスーツに付いたアスランの血液は未だに固まらず……出血の多さを物語っていた。

 

 

.

 

 

 

昼間なら……入院患者の過ごす笑い声で溢れるだろう、デイルームの片隅で、呼吸すら潜めて二人………座り続けていた。

 

何も考えられない……真っ白な頭の中に、足音が響き、止まった。

 

『すみません。アスラン・ザラさんの付き添いの方でいらっしゃいますか?』

 

書類を抱えた看護婦が声をかけてきた。

 

書類を手渡され、目を通す。

 

記された内容のある一点に視線が止まる。

 

『……看護婦さん……』

 

『どうしました?』

 

左腕にしがみついているラクスも震えている。

 

情けないくらい、かぼそい、力のない声だとキラは自身に思った。

 

『この書類………書かないとダメですか?』

 

『………え』

 

看護婦は不思議そうな顔をする。

 

 

.

 

 

 

ひとことひとこと………発する声すら、自分でもやっとだと……思う。

 

『その………彼は両親がいなくて………』

 

『コーディネーターですよね?婚約者の方は?』

 

看護婦の問い掛けに、ラクスが震える。

 

『その……彼は婚姻統制を破棄して……』

 

『……プラントに住んでる限りは…』

 

看護婦は不思議そうな声を発する。

 

 

制度が出来て……もう五年以上はたっている。

 

コーディネーターという、種の保存をメインとしているこの制度はプラントに住む人間にとっては強制だし、過去の議長達がコーディネーター全てに課した制度………。

 

 

『彼はオーブ国籍なんです……婚姻統制は義務じゃないんです!!!』

 

擦れた声で、精一杯話すキラ。

 

『え!それじゃ………』

 

看護婦は……事態に漸く気付く。

 

 

『友達じゃ………身元保証人になれませんか?』

 

 

.

 

 

 

1日以上かかって緊急手術は終わり、アスランの体は集中治療室に移された………

 

 

『……右腕、右足の接合手術は抵抗値も低いので、生活に支障がない程度には回復する見込みです。
肩から腰にかけての火傷もあと一回手術をすればほぼ元通りになるはずです。
内臓損傷も破損ヶ所は取りのぞき、手当てはしてありますが………呼吸等、慣れるまでは時間がかかるかもしれません……』

 

『そう………ですか……』

 

僕は……震える声を止めるので精一杯だった………。

 

横に座るラクスの躰の震えが………止まらない。

 

『脳には損傷はなく、脳波は安定してます。
………今は体力低下が激しいので、申し訳ありませんがわざと意識を取り戻さないよう、麻酔を打たせて頂いてます………』

 

『そう………ですか……』

 

ラクスは泣き崩れた。

 

 

僕も………もう涙を堪えることはできなくなっていた………

 

 

.

 

 

 

 

 

………(『もう……またアスラン連れ出すのかよ……キラ』)………

 

 

今回の連絡をした時の………カガリの顔が浮かぶ。

 

少し頬を膨らまして………でも、モニターの隣から伸びてきた指に頬を突かれて破顔する。

 

………(『アスランもたまには文句言ってッ……んッ』)………

 

 

モニターには………首長服の紫と、軍服の白が映る。

 

 

………(『こんにちは、キラ』)………

 

暫くたって………白いはずの頬をほんのり染めたアスランが映る。

 

その隣に………耳まで真っ赤になったカガリが………相変わらず頬を膨らましていて………

 

 

 

 

『…………ごめん………ごめんなさいッ………カガリッ』

 

 

僕は………泣いてるラクスに抱きつき………

 

 

声を震わせて泣き続けた………

 

 

 

 

二人の時間………

 

 

幸せな時間………

 

 

ボク………が

 

……………壊した

 

 

.

 

 

 

『カガリ………』

 

 

足に力が入らないカガリを支えたのはキサカだった。

 

『危険なことはないって………言ってたのに』

 

廃棄衛星での惨事。

 

ラクスから緊急に伝えられた連絡は、首長会の会議を遮るに足るものだった。

 

 

『カガリ………』

 

『何も心配いらないって………』

 

 

今でも蘇る最後のくちづけ。

 

 

『カガリ………』

 

『……ぁ……会議中だったんだっけ……戻らなきゃ………』

 

『カガリ………』

 

両肩を押さえてキサカは言う。

 

『会議にはしばらく出なくていい』

 

『何故だ!?』

 

キサカの言葉に即座に反応してしまう。

 

『心無き状態で会議に出たところで、良識ある判断ができるのか?』

 

『………』

 

亡き父の顔が浮かぶ。

 

『ザラ准将を宇宙の二人に任せっぱなしでいいのか?』

 

『!!!………でも!!!』

 

私には……約束が……

 

 

『彼の負傷はマスコミも防ぐことはできない。
ましてや先だってのクロムグラスの活動を抑止したことで、地上の英雄なのだから、国民も黙ってはいないだろう』

 

 

そう……彼の功績は……みんな……知ってる……。

そして……私との関係も……

 

 

でも……

 

 

……(『君は……オーブにいて……俺が』)……

 

 

『………』

 

アスランと約束………したんだ。

 

ここで帰りを待つって………

 

私が………オーブを守るって………

 

 

『少し国を離れたくらいで咎める奴などいないさ……』

 

『キサカ………』

 

『シャトルは用意してある。早くたて』

 

 

そんなアスランとの約束をキサカは知らない。

 

でも、キサカの思いやりある言葉に………ココロは………

 

 

『………ありがとう』

 

 

カガリの瞳には涙がたまっていた。

 

 

………やっぱり………

 

 

 

 

少しでもアスランの傍にいたい………

 

 

.

 

 

 

『はぁ!?じゃぁ、あいつの頭は吹っ飛んだまんまなのか!?』

 

イザークは叫び、ディアッカは口を開けたまま………

 

『うん………八歳頃の記憶で止まってて………』

 

キラはため息をつく。

 

『俺、あいつにあったのはアカデミーに入ってからだからわからないな……イザークは?』

 

『俺も知らん!!!』

 

『………だよね』

 

イザークの一刀両断の言葉に、ディアッカは大きく息を吐き出す。

 

アスランを心配している………と言うより、勝ち逃げされて腹を立てている………って言うそぶりの方が、イザークにはぴったりな感情表現だった。

 

相変わらず………な態度に、ディアッカは呆れつつもキラに問い掛ける。

 

『キラ、お前は幼なじみだって……』

 

 

.

 

 

 

『うん……でも、僕も十三歳で別れたから、プラントに戻った後のアスランが何をしてたのか知らなくて………ラクスも』

 

『婚約してからしかわからない………か』

 

 

………婚姻統制は十四歳から………

 

 

誰も知らないアスランの空白の一年………

 

キラは重くなりつつある空気を和らげようと、口を開いた。

 

『………アスラン……荷物も少なくて……記憶を戻させるにしても、きっかけになるものがないんだ』

 

『そうかもな………あいつの寮の部屋、荷物段ボールひとつしかなかったもんな……
あれ?イザーク、あの荷物オーブに送ったんだっけ』

 

『あぁ、そうだ。
ユニウスセブンで戦争締結してすぐにな。
あの中に写真入ってたぞ』

 

『………』

 

話し続けるにしても………直ぐに行き止まりが見えるようで………

 

 

皆、同じ………

 

アスラン・ザラは自分自身の存在だけを周りに与え続けていて………

 

 

『………飾ってなかったか………?』

 

『……見てないんだ………部屋に置いてあるの………』

 

 

声のトーンがどんどん低くなっていくキラ。

 

『変なところ潔癖だよな………あいつ』

 

『異動が多かったからだろ!!!』

 

ディアッカが独り言のように言葉を落とすと、イザークが吐き捨てる。

 

 

しばらく………静まり返り、三人の呼吸の音だけが重苦しく室内に響く。

 

アスラン・ザラは………

 

自分から、自分の身の上を話すような人間ではなかった………だからって………

 

 

こんなに………彼のことを知らないとは………

 

 

誰もが悲しく感じていた………

 

 

.

 

 

 

『………俺達、あいつに会えるのか?』

 

 

イザークはそろそろと話しだした。

 

『会えるけど……一般病棟だし、合併症の心配もなくなったから、面会謝絶はとれて大丈夫なんだけど………』

 

『?』

 

 

歯切れの悪いキラの言葉に、思わず怪訝な顔を見合せるディアッカとイザーク………

 

キラは………ヒトコト、ぽつりと呟き落とす。

 

 

 

 

『誰もわからないんだ』

 

 

.

 

 

 

『報道も大変だよな………』

 

キラと別れた後、マグカップを傾けながらディアッカが呟く。

 

『ダストに廃棄された衛星調査だろ……』

悲劇だよな………

 

 

そんな………地球圏に数えきれないほど、転がっているもののひとつをたまたま調査して………

 

国を独りで滅ぼすぐらいの男が………瀕死の重症を負うなんて………

 

 

『オーブは混乱するぞ』

 

『うちもだろ』

 

イザークの言葉に、ディアッカはため息混じりに言う。

 

『ラクスとキラは動揺してるか………』

 

ディアッカの言葉に、イザークは上層部の二人を思い浮かべる。

 

『…………仕方ないよな』

 

 

………それだけ………

 

 

夢も、感情も、精神も………

 

 

交じり合わして同じ時間を生きてきたのだから………

 

 

寄り掛かれる相手がいなくなったら………自分独りで立ち続けなくてはいけない………

 

それは………間違うことが出来ない………

 

重い舵を引き受けることとなるのだから………

 

 

.

 

 

 

『カガリ……寝てる?』

 

金糸の髪の少女が振り返る。

 

金色の瞳が潤んでる。

 

 

『夕ご飯はラクスが食べさせてくれたみたい』

 

私は夜しかこれないから………淋しそうに呟く。

 

責任感の強い彼女は地球圏が昼間の時、チャット会議を行っているのだ。

 

会議が終わり次第、病室にくるのが日課になっていた。

 

 

『変わらないのにな………』

 

ベッドの彼の頬にカガリは手を伸ばす。

 

あたたかな白い頬………肌理(きめ)細やかなのは、以前と………

 

 

『変わらないのに………』

 

 

.

 

 

 

声が擦れるカガリ………

 

包帯だらけで寝ているアスランは………キサカさんがアークエンジェルに運んで来てくれた、あの時の姿を彷彿とさせていた。

 

 

瞳を開けてくれれば、いつもの濃い翠の視線で私を受けとめてくれる………はずなのに………

 

 

『お医者さんとも話したんだけど、少しでも記憶を取り戻せる努力をした方がいいのかなって………』

 

『………そっか………』

 

 

後悔………は、してる。

 

でも、後悔したところで前進しないことは、何度も戦争から学んできた。

 

 

………でも

 

いつも、どんなに、傷ついても戻ってきてくれるアスラン………

 

今回も………戻ってきてくれたけど………

 

 

彼の中に………私は………

 

 

涙をためてカガリは問う。

 

『思い出してくれるかな?』

 

 

キラは何も答えられなかった。

 

カガリの………小さな希望は、キラの胸の奥を深々とえぐるのだった。

 

 

.

 

 

 

『……ん……』

 

 

夜中に目を覚ますと、隣に金色の髪のヒトがいる。

 

疲れているのかいつも俯せに寝てる。

 

僕の左手を握って。

 

 

 

 

誰かわからないけど………

 

ひとりじゃない空間に安心する。

 

 

『月のヒトなのかな?』

 

 

夜になると………このヒトはいてくれるの………

 

頭を撫でたいんだけど………右手が動かなくて………

 

 

ため息をつく。

 

 

僕は……どうして、身体を自由に動かせないんだろう。

 

そして………

 

 

また

 

 

 

 

眠くなる………の

 

 

.

 

 

 

『はい、あ~ん♪』

 

『あ~ん………』

 

ご飯を食べさせてくれるピンクの髪のお姉さんはいつも楽しそうだった。

 

『今日は鶏肉の豆乳シチューですよ』

 

『……また牛乳……』

 

『わがまま言っちゃいけませんよ………苦手なのはわかっていますよ』

 

『!!!なんで知ってるの?』

 

『なんででしょう♪』

 

ラクスはパンをちぎりアスランに持たせた。

 

『…む……』

 

返事を返さないラクスに不貞腐れる。

 

 

頬を膨らます癖は……先日の衛星事故の前と変わらない姿だった。

 

 

.

 

 

 

『ねぇ……お姉さんは僕の何?』

 

食事の終わったアスランは尋ねる。

 

翠の瞳をくりくりさせて………とてもラクスの答えに期待をしている。

 

そんな状況で………悲しい色がラクスの瞳を差す。

 

 

私の知っているアスランは、ここまで天真爛漫に疑問を口にするタイプじゃなかった。

 

どちらかと言うと、状況判断を先にして………それから、思慮深く、言葉を述べていく………そんなヒト。

 

感情的になることもあったけど、それは会話する相手と話している中で、どうしても説得しなくてはいけない時………。

 

性根がおとなしい人間だと、ラクスはアスランに対して思いこんでいたのだ………。

 

 

それが………こんなに、歳相応に子供らしかったとは………

 

 

『お友達………ですわ』

 

 

.

 

 

 

ラクスは自分の気分を変えるように笑ってみせた。

 

『でも………そんな友達いないよ、僕』

 

疑いの翠の瞳。

 

 

『………未来のお友達ですわ』

 

『未来の?どうやってきたの?』

 

『もう少ししたらわかりますわ』

 

ひとつひとつに反応を示すアスランは、ラクスの中であまりにも新鮮で………

 

次は何を言いだすのか………胸はどきどきする。

 

それと同時に、頭の中にはアラートが響く。

 

 

こんなのは………アスランじゃない………と。

 

 

.

 

 

 

病室の扉が開き、白衣のヒトが二・三人入ってくる。

 

その中にキラもいた。

 

『ラ………』

 

『アスランはきれいにご飯食べられましたよ』

 

記憶を無くした彼の前で、名前を言うのはまだ禁止されていた。

 

本人を動揺させてしまうからだ。

 

『さぁ、お名前と年齢、元気に言えるかな?』

 

『アスラン・ザラ、八歳。
僕はどこを怪我したの?
母上は?
父上は?
ここはプラントなんだよね?
どこなの?』

 

『元気だねアスラン君。
君が最後にいたのは何処かな?』

 

『ディッセンベル!!!』

 

満面の笑みを称え、間違ってないでしょ?と言わんばかりの表情のアスラン。

 

 

キラとラクスは悲しく顔を見合わせた。

 

 

.

 

 

 

やっぱり……意識が戻ったあの時のまま………

 

『何してたのかな?』

 

医者は穏やかに問い続けていた。

 

瞬間きょとんとしながらも、20も数えないうちに、口を開いて話しだすアスラン。

 

『友達のキラと鬼ごっこしてて……そしたら、急に空が近くなったんだ!!!
………僕、その時怪我したのかな?』

 

 

 

 

『ヤマトさん』

 

『はい。彼の記憶のことですよね?』

 

アスランの病室から離れ、担当医と個室に入る。

 

レントゲン用照明を付けないまま口を開く医者。

 

話題にしたい内容を予想するのは容易だった。

 

医者はご名答と言わんばかり、片眉をあげた。

 

『彼は……その……熱があったのに僕と遊んでて、その最中にヒキツケて倒れたんです。
確か、入院はしましたけど、1週間もしてないくらいで………』

 

キラは昔の記憶を辿る。

 

 

あの時も、僕がアスランを連れ回したんだっけ?

 

いつもより、だるそうにしているアスランを、僕は気付こうとしなかった………

 

 

.

 

 

 

『あとでカルテは取り寄せるけど、その時怪我はしてたかな?』

 

『頭を打っていたみたいで、包帯はしてた記憶はあります。』

 

『そうですか』

 

医者はひとしきりカルテに入力し終わると、さらに質問してきた。

 

『ザラさんは精神力は強いほうかな?』

 

『八歳の彼に対してですか?
それとも二十歳の彼に対してですか?』

 

ラクスはキラの表情を見ようと顔をあげた。

 

ラクスの衣擦れの音に、傍らを振り替えるキラ。

 

『両方………聞いてもいいかな?』

 

キラは眉をしかめる。

 

 

嫌な事に………頭に浮かぶのは、笑って頷いてくれるアスランの姿………

 

それは幼い頃も、今も………

 

 

悲しいくらい変わらない姿………

 

 

.

 

 

 

『僕が知ってる八歳のアスランはしっかり者で、当時の僕を守ってくれる人間でした。
精神力は強いと思います。
二十歳になっても………それは変わりませんでした……だから、爆発に巻き込まれて……』

 

思わず、手を握り締める。

 

 

赤い霧………アスランの血が………細かく粒状になった霧が、頭に蘇る。

 

 

『ヤマトさん……思い出させてしまってすまない。
クラインさんは?』

 

『私は十四歳からしかわかりませんが、素直で正義感に満ちてましたわ』

 

キラの握った手のうえに、ラクスは自分の手を重ねる。

 

その重ねた手も………心なしか震えている。

 

『そうですか………』

 

医者のヒトコトに、僕は………僕たちは………

 

 

アスランを知っていたのか………

 

疑問が出てくる。

 

 

僕は………アスランの何を知っているんだろう………

 

 

.

 

 

 

ユニウスセブンでの締結の後、オーブに身を置いたアスラン。

 

僕は………自分のことが精一杯で………

 

オーブが戦場になった時、僕はやはり守れなかった………

 

 

育ててくれた父を………

 

 

母から聞いて………自分の生い立ちを責めるよりも先に、育ててくれた感謝を優先しようと決めた。

 

 

………(『よかったな……キラ』)………

 

母の引っ越しの時に、笑ってくれたアスラン。

 

………(『お久しぶりです……おばさま』)………

 

母に挨拶すると………懐かしさからか、アスランに抱きついた母さん。

 

 

アスランは………

 

眉をひそめながら………堪えていた

 

 

涙が落ちるのを………

 

 

アスランは………本当は………

 

 

医者は手を置き、話し始めた。

 

『最適かどうかはわかりませんが………』

 

『カガリ』

 

病院のロビーでキラに呼び止められ、びっくりして振り返る。

 

『キラ………ラクス………』

 

親愛なる二人の顔を見て、顔がほころぶ。

 

はい………と手渡されたホットコーヒーを両手で受け取る。

 

『治療方針、医者が提案してくれたんだけど、どうかなって思って………』

 

『そうだよな………このままじゃダメだよな………』

 

 

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後日更新予定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【編集後記】

 

main(サイト内分類目次っぽいもの) こちらはガンヲタnejiがお届けする簡単節約とヲタク生活をすすめるサイトとなります。 メインで更新を行うページは呼吸するよ...

 

DayBreak・・・

まだ未完成です。

どこまで書いたのか忘れましたが、もう少し続きが書いてあったかと思います。

でも、データが消えてしまったので・・・ここでおしまいですね。

 

 

今年中にはなんとか完成させたいところですが・・・

かなりラフに書かれているので、もう少し細かく行間にも言葉を入れていく予定です。

 

 

20180327ねじ

 

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