2009年書き下ろし

Velocity Night-05-vol.5 supernova

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蠍座と乙女座の平衡定数の続編になります。
ラスト未完成です。

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このお話しが楽しめたら、【】をクリックしていただけると、次回のお話しへのやる気に繋がります。

Velocity Night-05-

vol.5 supernova

『………消毒………しましょうか?』

ラクスからの問いに、意識をキラは取り戻す。
頬の傷は銃弾が飛んでいくときに、表面をかすったものだった。
擦過射創………キラの頬には火傷の後は全くなかった。
所見した軍医は、脅し目的だと言っていた。
銃弾を放った人間も………傷つけたことは予想外だっただろう………と精神論を話してくれた。

これは、風圧で切れた傷だから………

それでも………僕の心の重さは変わらなかった。
多分………全てをラクスに話していないからかもしれない。

僕は………怖いんだ………

いつの間にか失っていく幸せが………

ラクスには………話せなかった。

アスランが短命種かもしれないと言うことを………

アスランはどうやら単独でテロリストを追っているらしい。
プラントと地球で活動している、規模の大きくなってしまった組織だから、人数が多いと国際問題にも発展しかねないから、カガリにも内緒で決めたようだ………と話をしておいた。

『………相変わらずですわね、アスランは………』

少し呆れながらも語尾を強めたラクスの反応に、ほっとする。

………お願い………

ラクスは、僕だけをみてて………

僕からは………離れないで………

嫌わないで………

………フレイみたいに

………いなくならないで………

………間違っても………

アスランの元になんか………

………いかないで!!!

.

『………湿気たツラだな』

緑のザフト軍服を身に纏ったディアッカへのヒトコトメの挨拶はそれだった。
眉を寄せたディアッカは、イザークが突き出した拳に自分の拳を軽く当てる。

『俺なりに後悔しているんだよ』
『………あいつの………冷たくなった遺体抱くよりはマシだろ』
………抱けりゃ……いいほうだろうし………

イザークはそう呟きながら、地球圏をモニターに写し、日付、時間と共にマップに入力していく。

『………これが昨日までの足取りか?』

イザークの手が止まったところで、ディアッカは口を開いた。

『………随分と精力的だよな………』
『あぁ………まるで、クルーゼ隊の時のミッションプラン見てるみたいだぜ………』

マップには入力された7つのポイントが点滅していた。
その中には………先日民間のニュースになったアプリリウスでの工場爆発や教会の場所も点滅していた………

………イザークがマップに記したもの………

………アスラン・ザラの出没されたとされる地点。

『………地球に降りている………と考えられるか?
ディアッカ?』
『………それは考えにくい………な』

ディアッカはアプリリウスを指して話す。

『昨日まではアスランはここにいたんだ。
オーブに代表と議長を戻して、共に下りるのは考えにくいな』
『………だな』
『アプリリウスの件は調べているんだろ?』
『あぁ………シ………ハーネンフースにやらせている』
『そりゃ、優秀なコトだ』
『………』

ディアッカに半分からかわれて、少しムスっと表情を崩しながらも、イザークは話を続けた。

『報告によると、アスランのルミノール反応は爆発時間とほぼ同時刻。
足跡も探したが、戻った形跡がないからあいつが仕込んだものではないと結論を下した』
『接触した人物の………自爆………か』

暫く、お互いの呼吸音しか………聞こえなかった。

『なんにしろ………』

イザークはモニターを軽くノックする。
渇いた音を響かせ、ディアッカに………否、自分に言い聞かせるように話す。

『俺達はアスランを捜し出して取り押さえなくてはならない』
『………そうだな』

ディアッカはイザークの言葉に相づちをうち………

『尋問………か』

悲しそうに呟く。

『仕方ないだろ………あいつは幾つもの破壊行為に嫌疑がかけられているんだから』
『………でも、それは結果の一部だろ?
あいつのしていることはテロリスト拠点の破壊なんだ!!!』

ディアッカは押さえ切れなくなった感情のまま叫びだす。

『分かってるさ!!!』

モニターを拳で叩くイザーク。

『………分かってるさ………でも、今の状況じゃ………』

………あいつの行動に、信用性がないんだよ………
プラントの破壊工作員なんだよ、今のあいつは………

再び静まり返った部屋に、外部からの通信アラートが響く。
ディアッカは………憔悴しきった瞳をイザークに向けた。
………俺が、イザークに告げたことは間違いだったんだろうか………
アスランと話してから数日間、どういう結論になるのか………何度もルートを変えて悩んだ。
でも答えの行き着く場所は限られていた。

だから………イザークに話した。

だが………その手段は既に遅く………
アスランがプラント内で破壊活動を起こした後で、しかも民間のニュースになった後だった。
アスランよりも先回り出来なかった自分に、がっかりしながらも、今からでも………間に合うと………

そう信じるしか………

もう………

………手段は

『………何ッ!?』

アラートに応じたイザークは声を上げた。

『もう一度言ってみろ!?!?!?』

ノイズだらけの音声の中………聞こえてきた声………

………ディ………セ…ベ………に
………イ……ニ…ト……ジャス………スが現………し………

『インフィニットジャスティス!?!?!?』
『イザーク!?
まさか………』

ディアッカの問いかけより先に、イザークはマイクに向かって叫んでいた。

『スクランブルだ!!!
高速艇に俺のとディアッカのザクを早く!!!』

………アスランを

………止めるんだ!!!………

.

主人のいない部屋のベッドで、私は左手をかざしていた。
すっかり暮れた部屋の中で、灯りをつける気分はなかった。

………(………このメインの時計は君の時間………)………

アスランの柔らかな声は、あの時、耳からも………そして、抱き締められていたから………彼の体内で反響した声も耳に直接………

………(………月の満ち欠け……曜日……日にち……………)………

無邪気に聞いた、もう一対の針の存在。
黙ってしまったアスランが可愛くて、おでこをすり寄せた。
唇をついばんで、わたしなりの答えを告げたのだけれども………
私との時間………もう………
………共存………することは………

『カガリッ』

廊下の光が私のいるアスランの部屋に入る。
逆行に目を細める。
それでも………キラの表情が滲むのは………

狂おしい程の想いのせい?

『イザークから連絡が入った!!!
アスランはまだプラントだ!!!』

………あぁ………やっぱり………
私の………時間とは………

合わない

.

『今、アスランにはプラント内での破壊行為に対しての嫌疑がかけられている。
イザークに勅命にしているから、取り扱いに関しては悪くはないはずだ』

掲げていた左手を下ろし、右手と合わせて顔を覆う仰向けのカガリに、キラはそう話した。

『カガリはここで待つ?
僕は………』
『………って………』

キラの言葉を遮って、カガリは涙声で言葉を溢した。

『………カガリ……だって………』

キラの頭の中にはさっきの情景が浮かぶ。

………(………好きだって言える………)………

………(………強さが欲しい………)………

そう………泣いて………た……じゃ………

『………連れてって………キラぁ………』

抱きついてきたカガリを受け止め、濡らした頬の涙を拭おうと、手のひらをかける。
黄金色の………涙に光る………トパーズのような瞳が、僕を見上げる。

『………私は……弱いから………だから………』

………必要なの

………アスランが………

.

『………か……カガリ』

君は………こんなに………弱っているのに………
辛くしているのに………

………ディオキアの時より………も

アスランに否定されて………
それでも、オーブ軍を守りたくて

………好きな

………

………愛してる………アスランの前に………

モビルスーツで………

出たあの時よりも傷ついているのに………

『………カガリ………気持ちはわかるけど………』

僕は金紗の髪を撫で上げる。
アスランは………カガリをオーブに留めたくて………

そして………僕も………

ラクス………も………

………アスランは

本当に………

僕らを守りたいから………

『………ね………カガリ?』

.

………気のせい?

見つめたキラの瞳が潤んでいるように見えたの
私が………泣いているから?
悲しそうな表情を浮かべたキラは、私の髪を撫で付ける。
いつもと同じ撫で方だけど………

私が心地よく思えるのは………

………もっと柔らかくて
………包み………こむような………

それでいて、指先には力がこもっている………

そんな、髪を梳くような………撫で方………

………(………かがり………)………

消え入るような………
私にだけ………聞こえる………

優しくて………甘い………

『………ァスラ……』

逢いたい
だって………

………私には

アスランが………

.

『マードックさんッ!!!』

相変わらずつなぎズボンを着用するマードックの後ろ姿を見つけたキラは、大声で呼び掛ける。
懐かしい………でも焦った呼び掛けに驚いたマードックは、思わずスパナを落としそうになった。

『ぁ”あ”!?』

口を半開きににしながら、マードックはまじまじとキラと、その隣のカガリの顔を見つめる。

『フリーダムとルージュにロケットブースターだと?!』
『うん』

似通った瞳に見つめられ、マードックの声も裏返る。

『お嬢ちゃんは乗れるのかい!?』
『そ………それは………』

カガリは手の平をぎゅっと握って拳を作る。

『やってみないとわ………』
『………俺が連れていきます』

背後からの声に………背筋が震える。

………どうし………て

きゅんと縮まった下腹部。
勝手に震えた身体。

『………Gに負けて………事故起こされたら………俺………アスランに合わせる顔が………』
『………シン………ぇ……ラクス?』

振り向いたキラが、その姿を確認し、声に出す。

『いつから………ここに?』

キラの問い掛けには答えず、にこにこ笑みを浮かべながら近づくラクスは口を開いた。

『みなで………アスランを迎えにいきましょう?』

マジかよ………

そうヒトコト呟いたマードックは直ぐに取り付け準備に走りだした。
ぽろぽろ涙を流すカガリの肩を抱きながら、ラクスはパイロットスーツに着替えるべく、モビルスーツドッグから出ようと歩き始めた。

『代表………どちらへ?』

いつもより………感情を押さえた声………
彼女の茶目っ気の消えた声は冷静な声………と言うより、監視を含んだ冷たいものだった。
唾を飲み込み、カガリは凛と答えた。

『迎えに行くんだ、アスランを』
『そう………』

カガリの言葉を聞いても………彼女は、口元だけ笑みを浮かべ………瞳は観察するような冷たい感情を抱いている。

『だから、そこをどいてくれ、エリカ!!!』
『いやよ』
『………アスランから言われているのか?!』

とっさに出た言葉………

エリカ・シモンズがアスランを技術的に助けて………プラントで対テロリスト破壊を繰り返しているのはさっき判明した。
アスランは私に、オーブ軍除隊前日も、更にプラントに行った時もオーブに………モルゲンレーテにいろと言っていた。
エリカにも………口うるさく言っていたと、カガリは考えたのだったが………

『ふふふ………あはは………』

一気に破顔して笑いだすエリカの姿に、あっけにとられ………

『わざわざプラントに行かなくても………いいから止めに来たのよ、カガリさん』
『シモンズ主任………それは………』

私よりも早く口を開けるラクスに、エリカは目を細めて………二人にウィンクをする。

『あのコ………自分の目で確認しないと………ダメなタイプなんだもの………』

.

案内された部屋はプレゼンルームだった。
パソコン連結のモニターに映し出された地上紛争地点。

『アスランがプラントで破壊しているレジスタンス。
そこの地上部隊拠点がグリーンよ』
『………ぇ………こんな……場所に………』

砂漠となっている地域に多く点在するそれらを、カガリは間違いではないかと思ってしまう。
思わず、隣のラクスの顔を見る。
ラクスも………気付いたようだった。

『彼らの活動を保護している国は現在ないが………良い活動だと認識している国は多い………我が国オーブ……も………』
『えぇ………カガリさん……私のプラントでも………活動に参加しているヒトは多いですわ』
………クロムグラス………緑と平和をくちびるに………ですわよね………

エリカは軽く目配せをして、説明を続ける。

『表向きは“グリーンベルト復活”を口にして、枯れた大地に植物の復活を目的にして、平和への助けを説いているけれど………』

写真スライドに画面は変わり、エリカの操作により局所拡大が行われる。

『彼らが育てているのは爆発的な成長をもたらす………そうね、【食べる遺伝子】ってところかしら?』
『植物への………それもヒトが口から入れるものに対しての人為的化学的遺伝子組み換えは禁止している!!!
それはコーディネーターが生まれる前から人類……いや、生物には危険なことだと!!!』
『その食品を食べた場合、やはり身体に異変が起こるのでしょうか?』

一気に反応した二人に、エリカは困ったように笑って………一枚の写真を出した。

『………それは三ヶ月前に………アスランに飛び掛かった………』
『そう………ナチュラルの女性だったわよね?』

カガリの呟きにうなずいて、エリカは言葉を続ける。

『力はコーディネーター並………シンの………アスランへの防衛行動で彼女を殺害したけれど………そのあと解剖したのよ。
そうしたら体内に遺伝子異常を見つけたわ。
男の子を………調べて………なんだけど。
彼女にはある催眠作用が人為的にかけられていた疑いがあるわ。
電気的なモノで………脳に刻み込まれるモノだったのではないかしら?きっと………』

怪訝な顔をする幼さを残した二人の女性に、シモンズは悲しげに話した。

『アスランは聞いていたのよ、その女性に殺されそうになった時………』

………翠の瞳………って

『翠の………なんて………アスラン以外にも………』

目を丸くしてカガリはエリカに訴える。

『そう………ね』

一瞬言葉を飲んだエリカ・シモンズはゆっくり口を開く。

『………こうは考えられない?
固有認識するものを………異常行動発動の引き金にする鍵として、催眠作用をかけていたら………』
『固有……にんし………』

そんなもの………と言おうとしたカガリの隣で、ラクスは呟いた。

『声紋………角膜………静脈………』

………確かに………声は………
でも、その他は………どうやって………

『………該当した人間を襲うように人為的に脳を弄って………』
『そんな!!!』

………ブルーコスモスみたいな……実験が………また………

『………多分まだ………実験段階よ………もう一人の男の子は発動してない……から………』

悲痛な悲鳴を上げたカガリに、淋しそうにエリカは微笑み返した。
沈んだ部屋の中で、ラクスはゆっくりと口を開いた。

『食べる遺伝子とおっしゃいましたが………』
『えぇ………これよ』

ラクスの言葉に機敏に反応したエリカ・シモンズは、ある映像をモニターに映し出す。

『これは………』
『アスランが………内密にこの為に諜報部を作った人物が採ってきた植物の一部よ。
それを培養させたものをマウスに食べさせているの。
食事分量は同じだけど………培養した植物を………そうね、αとしましょう。
全食をα、半量をα、αは与えないという三種類の食事内容を三食一週間、同日誕生したマウスに与えるようにしたわ』

簡単な説明は二人の耳を抜けていった。
早送り………しているかのように、αのみを与えられているマウスはどんどん成長していく………。

『凄い勢いで急速成長するの。
マウス実験でこれよ?
もし、これが人体に使われたら………』

カガリとラクスは無言のまま………瞳を交わらせた。
雪のように………音もなく………積み重なる不安。
胸が………どす黒く染まっていくような感覚を覚えながら、ラクスは口を開く。

『………付加価値……の………特異を組み込んだ植物………も………』
『………研究しているかも知れないわね』

………考えたくはないけど………

そう、呟きを落としたエリカも………苦い顔を崩さなかった。
そんな雰囲気を変えるように、カガリはちょっと大きめな声を上げて問い掛ける。

『エリカ………その、植物を奪ってきた人間に逢いたい………しょうさ……』
『無理よ………カガリさん………』
『………なん……で』

………わけがわからない………

不満一杯の表情で、カガリはエリカを睨み付ける。
そんな彼女を鼻で笑い、エリカは更に表情に憂いを交じわせていった。

『………泣いてたわ、アスラン………』

………大事にしてた………部下だったんでしょう………ね

………感情が………止まった………

………アスランが………泣いて………た………?

『………オーブ軍の………数少ないコーディネーターだったのに………って………』

諜報させていた軍のコーディネーター………が………?
自然と………胸がチクチクと痛みだす。

あぁ………そのヒトって………

………そのヒト達って………

………(………アスラン、お香でも焚いたのか?)………

珍しく………私よりも遅く帰ってきたアスランに、私は何気に抱きついたあの日。

『………な……んで?』

アスランの軍服からの香りに尋ねたら、身体が一瞬硬直してた。

『そりゃ………』

軽く言おうとした言葉を、思わず照れ臭くなって飲み込んだ。

……お前の香水の匂いと………違う………から………

.

『話が………反れたわね………』

悲しそうに目を伏せていたエリカ・シモンズは瞬きをして、ゆっくりと瞳を開いた。

『ここの争いにアスランは先日衛星操作して介入したの。
他の場所は思惑通りに進んだのだけどもね………』

瞳同様、口元には少し困ったような笑みを浮かべていた。

『だから、自ら………』
『そう………』

モニターから目を離したカガリ、黙ってしまったラクスをエリカ・シモンズは目の端で捕らえながら唇を閉じた。
暫く………部屋は静かになった。
沈黙を破るように、ゆっくりと口を開いたのはカガリであった。

『だからジャスティスを?』
『………ジャスティスは……あれは………』
………回収しに行っただけよ………

何気なく答えてしまって、エリカは気付いた。
二人は………アスランが既に敵とするレジスタンスの本拠地に忍び込んだのは知らなかった………んだ。

『………回収?』

即座に眉をひそめるカガリ。

『………主任………何か……隠していらっしゃいませんか?』

ラクスですら………何かがおかしいと思ってしまった。

『………』

………話したら………
いえ、なんとか誤魔化して話を作れば………

『エリカ………アスランに……何か………ぁ………』

詰め寄ってくるカガリは何かに気が付いてしまったみたいで………
私の腕をジャンパーの上から掴んできた。
力がぐんぐん加わってくる私の腕………

『エリカッ!!!肩の傷ッ!!!アスランはどんな治療したッ!!!』
『!!!アスランに逢ったの!?』

エリカは思わずカガリの問いに応えてしまった………。

『全治何週間だ!!!
あいつ………傷、塞がったぐらいで動いているんじゃないのか!?』

カガリの指先の力は強く、それはアスランへの想いに比例しているのはよく………わかった。
誤魔化しの効かない状態………私は胸の詰まる思いで答えた。

『………そう………よ』
………それでも………時間を稼いだ方………なのよ………

瞳の端に溢れてくる涙。

『な………なんで止めないんだッ!!!』

瞬きと同時に………カガリの瞳から落ちた涙は、彼女の声を蝕み、詰まらせるのだった。

.

『………カガリさん』

ラクスはなんとか感情を押し留めようとした声で、カガリに声をかけた。
怪我をしたアスランを過去に戦地に送ったラクス。
その後、アスランの身体が元に戻るのに考えていたより時間がかかったことを、思い出したのだ。
あの時は………カガリが混乱したオーブ情勢を立て直すのに必死で、たいしてアスランに構っていなかったから………意識を失い、ICUに入れられていたことすら知らないでいた。

でも………今回は………

『………』

なんとか感情を押さえてくれたカガリは黙ってくれたが、主任の腕を離そうとしない。
きっと………気持ちを押さえているから、口を閉じてしまったのだろう。

痛々しい………生の感情………

ラクスはわからないように一回眉をひそめ、落ち着いた振りをして、口を開いた。

『シモンズ主任………アスランが戻る………とは………』

主任も………悲しげな表情を浮かべ、口を開いた。

『………あのコに頼まれて作ったコンテナ………』

ポインターを出して、モニターを指す。

『ここの静止軌道上に配置しておいたんだけど………』

切れの悪い語尾が、二人の心を不安にさせる。

『………襲撃……?』
『違うわよ………』
………プログラム変更、されてたのよ

シモンズは眉をひそめる。
私の意志じゃないのよ………と、言いたそうに。

『アスランの現状のシナリオ通りに行くと………あと一時間後には、降下してくるわよ、この辺りに………』

ポインターの赤い印が、モニターの上を舞うのだった。

.

『………わた……し』

開いた瞳の先には白いグローブをはめた手が、操縦悍を握っていた。
コックピットには何回か乗せてもらってはいたけど………

………でも、ここは

見た覚えのないコックピット………

そして………

………こんなに近くにヒトの気配を感じ続けるなんて………
サフィーラ以外の人間の………を

被せられたままのヘルメット………
少し視界の遮られた空間の中、私は視線だけ動かして、中の様子を探る。

………量産型じゃない………

………プロトタイプ………

………テスト……タイプ………

でも、ロールアウトしたばかりの革とグリセリンなんかの匂いは感じない………
………寧ろ

もう………使いこんだ………
消え切らない………汗………の

『………気が付いた?』

聞き覚えのある声だった………
柔らかな声質………

辿る記憶から人物像を思い浮かべようとしても………
なかなか定まらない。

『私を組織に返しなさい。
命だけは助けるように部下に伝えます』
『………部下じゃないだろ?
サフィーラは………』
『!!!』

………なんで知ってる………の?

柔らかい言葉回しに、私はますます正体がわからなくなる。

『悪いけど………君をもう組織に戻す訳にはいかないんだ』

優しい声質の中にも、はっきりとした意志が伝わってくる。
でも、私が組織から離れて生きられないことをこのヒトは………
生きるためには………帰らなきゃ………

『………私は』
『知ってる………君はある食べ物を継続して食べなくてはいけないことを………大丈夫…………』

………準備はしてあるから………

『………』

この人間は私をどこまで知っているのだろう………。
多分、私が乗っているのは先程から話している人間の膝の上だ。
動くにも………すぐに捕まるから動けない。
それに………目的もわからない………

『………これはどこに向かっているの?』
『とりあえず………キミの仲間から逃げているところだよ………』
『………そう』

だから………あなたのグローブに包まれた手は動かないのね………

『………まだ時間かかるから、もう少し休んでいた方がいい………マリア………』

馴れ親しんだように名前を呼ばれ、思わず肩を震わせてしまった。

『それとも、マドモアゼルコートニー?………いや』

………エオリア・フィッシュバッハ………

『!!!どうしてその名前を!!!』

思わず声のする方に顔を向けた。
優しく細められた瞳は………
私と………同じ………翠………

『フィッシュバッハを最後に名乗っていたのは独りだけだよ。
………彼女はもういない………フィッシュバッハ家は滅んでいる』

悲しい色をする………翠の瞳………

『フィッシュバッハの血は………引き継がれているけど………ね』

.

抱き抱えられて下ろされた場所は………貨物室みたいなところだった。
セントラルエレベーターで二つしかないフロアボタンの上階を押す。
エレベーター内で………ようやく男の手が私のヘルメットに触り、引き上げてとってくれた。
半重力の空間で、グレイアッシュの髪がふんわりと舞い上がる。

『一番右側が仮眠室だ。
先にシャワー、浴びておいで。
タオルも、羽織るものも………扉の中にあるから使うといい………』

柔らかく微笑む、パイロットスーツのままの男の真意が読めず、思わず見つめてしまう。

『………なに?』

優しい言い方に、深い考えは無いように感じた。

『………君が上がった後、俺もシャワー使うから、わざわざ綺麗に掃除しなくていいよ』

そう、男は言うと………再びエレベータに乗り込み、先程の貨物室に降りていった。
下りボタンを押し、扉が閉まると即座にアスランは瞳を閉じた。
エレベータ内の手摺りを握る力さえ………使いたくなかった………
半重力のエレベータの中で、アスランの身体は宙に浮き出した。
ジャスティスから降りたフロアに辿り着き、エレベータから這い出て、すぐ脇の扉のボタンを押す。
部屋に入ると、自動的に正圧に満たされていく室内………少し濃い空気を鼻から取り込みながら、アスランは、慎重に右手をパイロットスーツに触れさせた。

少女を………連れてきたのは偶然の産物だった。
レジスタンス部隊の混乱を招く為に………派手に鳴らしたアラートが、次に向かう上階から響いていた。
サフィーラは………そちらに状況確認に向かったのだろう。
数人の護衛兵と、侍女のような人間の真ん中に、彼女はいた。

………キツい……かな

せめて、自動小銃があれば………
彼女を奪った後は直接攻撃しかできないだろう。

………それ……まで………か

両足で思いっきり床を蹴り、アスランはレジスタンスの象徴として振る舞う少女を奪いに行った。
気絶させた少女に、自分のヘルメットをかぶせ、身体ぴったりに作られているパイロットスーツに着替えた。
身体を掠めた銃弾が、裂傷を幾つか作っていた。

そして………

『………ッ』

………やっぱり、開いてしまった左肩の傷。
予定外に………身体を動かさせすぎたから………

………カガリ

まだ………指先に………彼女の匂いが………残って……いるような………

身体を休ませることをしなかった報いだろう。

後悔はしていない。

だから………いいんだ

俺は膝に、気絶した少女を乗せ、ジャスティスを起動させる。
モビルスーツ戦を潜り抜け、隕石の影にかくれながらコンテナに着いた。
奪った少女にシャワーを浴びるように仕向け、俺は再び裸になり………

施術台に身体を預けた。

形状記憶クッションがゆっくりと沈んでいき、俺はゆっくりと瞳を閉じる。
機械アームが器用に動いて傷口の消毒をして、次々と絆創膏を貼っていく。
消毒でチリチリ痛む皮膚が、眠気から俺を現実に呼び戻す………

………ドリンク剤飲んで……体力、かいふ………く…………

………シュンっ

………眠りに落ちそうだった………
扉の開閉音に反応して、右手で予めサイドテーブルに置いておいたバスタオルと、その下に隠した拳銃を掴む。
身体をバスタオルで無造作に隠しながら、施術台から半身を起こして入り口に銃口を向けた。

『………エオリア』
『………シャワー……浴びさせてもらったわ』

綿のガウンを着こんだ少女が、銃口に臆することなく扉の前に立っていた。

『消毒臭い………ここは』

少女はそう呟くと、施術台の上で半身起こしたアスランに近づいてきた。
銃を向けるのを止め、身体の脇に下ろしたアスラン。
出来れば………この状況を知られたくなくて………先にシャワーを浴びせたのだが………
そんな渋い彼の胸中など知りもせず、少女は彼に近づき、施術台に腰をかけた。

『………私を奪った時の代償?』
『………ん』
『思ったより少ないのね………それだけ、貴方が優秀ってこと?
それとも、私の兵士達がだらしないってこと?』

擦り寄ったエオリアのガウンの合わせから、僅かな白い谷間が見える。

『………君の兵士は優秀だよ。
キミは………怪我、してないだろう?』

アスランは少女の顔に視線を移す。

『キミを奪った後も、容赦なく撃ってきたよ』
………サフィーラなんか……特に

少女はアスランの声を聞きながら、手の甲………上腕……大腿部………手近な部分の絆創膏の上を、指先でなぞっていった。

『手術………しないの?』
『………手術?』

いつのまにか………少女の指先は、消え残った古傷の上を走っていた。

『うん………傷を消すための手術………』

『………こんなにいっぱい身体に傷………残して……いいの?』
『………どういう意味?』

小さな跡から大きな跡までひとつずつ………たどたどしく触れるエオリアの指先は、アスランの感覚を痺れさせていく。
カガリに………触れさせることはしなかったから………
過剰に反応を示しそうだった。
なんとか理性を保とうと、アスランは少女に問う。

『残った傷を消そうと、いつも手術するコがいるの………ご両親から授かった身体に、傷を残したくないんですって………』
………なのに、前線に行くのよ、そのコ………

瞳を細めて、エオリアはアスランの右脇腹の薄く陰った傷に指を当てた。

『………消したくない傷が………多いんだよ』

アスランはいつもの通り、嘘を隠すように笑った。

カガリからの傷も………

父上に撃たれた銃創も………

シンにMSで落とされた時の傷も………

自分を律し、振り返る意味での糧となるから………

間違いを繰り返したくないと言う、意味を兼ねて………
消すことは出来なかった。

.

施術台の上の男女………
腰にバスタオルをかけただけの藍色の髪の男は柔らかな笑みを浮かべた。

『上のフロアのベッドで休んだ方がいい………疲れているだろ?』

男の身体に触れていた指を離し、女………まだ幼さが際立つ少女は、伏せていた瞳をゆっくり開く。
男と同じ翠の瞳が、瞬き、男の正面に少女は顔を移動させ、再びゆっくり瞳が伏せられる。

『………何?』
『寝る前に………することがあるの』
『………あぁ』

少女の………アッシュグレイの毛先が頬をくすぐる。
男………アスラン・ザラは思った。
象徴として育てられたと………考えていたが、少女として………育てられたんだ………
俺は彼女のおでこに口付ける。

寝る前のキスなんて………母上と月のコペルニクスに住んでいる時以来………じゃないか?

唇をそっと離し、おやすみと呟いた。

『………違う』
『………?』

翠の瞳が訴える。
俺は意味がわからないままエオリアを見つめた。

『違うわ』

ゆっくりと………瞳を閉じた少女は俺の頬を両手で包み………

『………ぇ?』

唇の間から入ってきた生暖かな感触………
慣れた………動き………

………え……おり……ァ………

キミは………サフィーラの………

………薬で………成長させられたとはいえ………

キミはまだ………幼児……に分類される………のに!!!

俺は彼女の両肩を手で押さえ、自分の身体から離した。
慌てた動きだったから、左肩に激痛が走る。
胸に下げ続けている赤い石も、揺れ、胸元を打った。
痛みを堪えながら、なるべく無反応なトーンで話そうと、俺は決めた。

『………キミはサフィーラと寝る前、毎日………』
『サフィーラは寝る前の儀式だって、教えてくれたわ』
『………』
『お互いを慈しむ行いだって』

………なんで

………こんなこと………に………

茫然と………白けていく頭………

そんな俺を知らず、彼女は再び、俺の身体にしなだれかかり、首に唇を這わせ、舌でチロチロ舐めていた。

どうすれば………いいんだよ………

『………な……に?』

俺は彼女を抱き寄せ強く抱き締めた。

『痛い………強すぎ………』
『そんなこと………しなくていい………する……必要もない………そんな儀式………』

俺の腕の中で藻掻くエオリア。
彼女が………ヒトとの触れ合いに慣れてないのか、サフィーラが彼女への独占欲として………こんな馬鹿げたことになっているのかはわからない。
彼女への独占欲………ならいいんだけど………

………俺への………当て付けだとしたら………

左肩がズキズキ痛む。
毛穴から………一気に汗が吹き出てくる。
痛みに歯を食い縛りながら、俺は彼女を強く抱き締め続ける。

『でも!!!』
『でもじゃないッ!!!』
『………』

裏返った俺の声に気が付いたのか………彼女は藻掻くことを止めた。

『………もう、そんなことは………しないでくれ』
『………どうして?』

不思議そうに丸くなった翠の瞳が俺を映している。
あまりにも………無垢な色の瞳に、俺は正視することが出来ず、左に目を背けた。
先日、強引にカガリを抱いた………優しくしなかった背徳心からか………
それとも、こんな事態にしてしまった………自分の行いの悪さからか………
彼女に………身体を重ねる理由を述べるコトが、恥ずかしいからか………

神のリンゴを食べた後のような………後ろめたい感覚が、身体中に広がる。

『それは………男女が愛を伝える行為だ』
『あ……い………』

俺はエオリアを見ることが出来ない………

嘘を話しているわけじゃない………でも!!!

『キミが心から好きに………このヒトの為なら自分を捨ててもいい………そう、思える相手以外には、してはいけない行為だ』

………真実を………述べているのだろうか?
俺の不安を読むように、ハウメアの赤い守り石は揺れていた。

.

『………鳴ってるよ、アラート』
『………ん』

肩の傷口がズキズキ痛む。
エオリアの右肩に、左手を置かなければ………筋肉が張ることはないから………緩和される痛みであることはわかっている。
でも、今、手を離してしまったら………ダメな気がする。

彼女に促されるまま………静穏を壊す緊迫のアラートを止めるため、俺は右手を持ち上げた。
軽く引き寄せた、サイドのタッチパネルを右手で操作する。

救命チャンネルでの呼び掛け………
流れる文字列を追う。

………あぁ………懐かしい……な

クルーゼ隊の時の………暗号文なんて

指定されたコードチャンネルに切り替える。
直ちに施術室に流れる………強引な………力強い声………

やっぱり………キミか………

.

鳴り響いていたアラートに出るように勧めなければよかった………
キツく抱き締められているのは初めてのことだった。
男の………汗を含んだ体臭が鼻をくすぐり、サフィーラとの儀式を思い出させられた。

儀式………

彼の………サフィーラの身体を隈無くキスして………
彼の男の印を私は身体に受け入れ………
サフィーラの波に身体を委ねる………

それが今、目の前の翠の瞳の男が全て否定した。

………する………必要のない………儀式……だと

少し………早いような、翠の瞳の男の鼓動を聞きながら、タッチパネルを器用に操作する彼の右手を眺めていた。
右手が、再び私の身体に置かれたと同じタイミングで、室内にノイズが流れてきた。

《………るか……応答しろッ………アスランッ!!!》

………ぇ………

………(当時の流行りですよ………現クライン議長と婚約された時でしたから………)………

男の手が、髪に触れる。
慣れたように髪を梳いて………

………標的としていた………名前……は、確か………

『………アスラン・ザラ』

髪を梳いていた手が………止まった。

.

再び………俺は少女の髪を梳きだした。

………どこにでもある名前……だから………

ファミリーネームが直ぐに彼女の口から出てくるとは思わなかったんだ。
イザークの声が室内に響く中、俺は無視して少女に尋ねた。

『………気付いてた?』
『いいえ………わたし………』

身体に乗せていた少女が素早く動く。

『ぁ………』
『………そのまま引金を引く?』

俺は銃身を施術台と腰の間に挟んでいた。

拳銃に触れた少女の指………

『キミは俺が憎いの?』
『………』
『キミの個人の感情で撃たれるなら構わない。
組織の為にと言うなら、俺はキミを拘束する』

《………聞こえ……だろッ!!!返事しろッ………アスランッ!!!》

.

指定無線コードにアクセスされたのはわかった。

『何やってるんだ………アイツ!!!』

あと………10秒たったら、またコード変換しないと、探知に引っ掛かってしまう。

『………そう、イラつくなよ……イザーク………』
『平然としていられるか!!!』

ディアッカの言葉にも噛み付くイザークのイライラ感情はアスランの生死の心配も輪をかけていた。

『………おい、落ち着けって………イザーク………。
伝言メモ、きたぞ』

………こりゃ………

ダストの中の隕石のひとつじゃないか?

ぶつぶつ呟くディアッカに、イザークは変わらない不機嫌な声を洩らした。

.

『………アスラン』

指定された隕石にイザークとディアッカはいた。
ゆっくりと近づいてきたインフィニットジャスティス。
直ぐに話をしたいが為に、二人はコックピットから出ていた。
隕石に辿り着いたインフィニットジャスティスだが、なかなかパイロットが降りてこない。

『………重度の怪我でもしてる………のか?アイツは?』
『そんなにアスランが心配なのか?イザーク?』
『ばッ………そうじゃないッ!!!』

思いっきり怒鳴って否定するイザークをディアッカは、心の中で笑っていると、上部のコックピットが開き、ヒトが降りてきた。

『『………』』

待ちわびていた二人は顔を見合わせる。

………アスランは

………誰を連れているんだ……?…

.

『………言いたいことはわかっているだろうな』

開口一番、イザークの刺のある口調………
ディアッカは、先行きが見えたなぁ………と、心の中で思った。
こんな言い方したら………アスランは何も話しちゃくれないだろう………

『アスラン………俺と別れてから何してたんだ?
お前が指示した通りに、現状計らってある』
『………そうか。
ありがとう、ディアッカ』

ヘルメットの中で、アスランは口角をあげた。
まわりを落ち着かせる………その癖は変わらなかった。

『ディッセンベルの爆発事故は収拾ついたかい?』

ちょっと………意地悪そうに言うのは自分の方が優勢と考えている時のアスランの悪い癖。

俺達が知らないとでも?

………いや………違う………

連れている人間に与えたい情報………なのか?
ミラー反射のバイザーをしているから、中の人間の性別すら分からない。

『オーブの姫を放って、お前は何がしたいんだ!!!
アスランッ!!!』

アスランの斜め後ろに立っていた人間が、アスランの左手を握った時、一気にイザークがキレた。

.

『………イザーク』

俺はイザークの肩に手を置いた。
少しでも興奮したキモチを諫めて欲しくて………でも、現実は………
うまくいかなかった。

『お前は何をしたいんだ!!!なんだそいつは!!!』

止まらなくなったイザークはアスランの両肩を握った。
ポーカーフェイスを保っていたアスランの眉間が、一瞬、強く溝を作った。

『ぁ!!!』

アスランの声とは違う、高い声が小さく聞こえた………

『きッ……さま……女と!!!』
『………』

黙ってしまったアスランを揺さ振るイザークとアスランの間に、俺は身体をねじ込ませた。

『イザーク、手の力を弱めろッ!!!
なんで、お前も痛いって言わないんだアスランッ!!!』
………冷や汗かいてまで………

耐えなきゃいけないモンじゃないだろッ

『………冷や……汗……?』

イザークはアスランの肩から両手を離した。
力が張り、腕の腱までパイロットスーツ越しにわかるぐらいだったイザークの腕は、今は力なく宙に漂っていた。

『………アスラン………何針縫った?』

右手で左肩を押さえるアスランは冷や汗を浮かべながらも軽く笑った。

『さぁ………縫っても、くっついていたのは初めの三日間ぐらいだからな………』

.

『ディッセンベルプラントは全て問題なく稼働している。
損傷はあるが、生命維持関係の稼働割合はブルー圏内だ………かろうじてな』

『………そうか』

穏やかな笑みを浮かべるアスラン。
罰が悪くなったイザークは、彼とは目を合わせようとしない。
そんな性格を知ってか、アスランはわざとイザークに話し掛ける。

『俺をこのままプラントに連行するか?イザーク?』
『………』
『今、左手には力が入らないから………取り扱いはラクだぞ』

軽口を叩くアスランの右側には、身元不明の女。
なんで………連れて歩いているんだ………アスランは………

『アスラン………その女性、こちらで預かるよ』
『………?』
『ディアッカ?!』

俺の声に、アスランは笑っていた表情を変えた。
視線だけ、俺に向ける。

『彼女を預かれば………お前のやりたいことは早く終わらせる事ができるんじゃないのか?』
『………』

女性は、アスランの右手を両手で握った。
ディアッカの考えの中では、女性がアスランに固執し、くっつき回っているコトを望んでいた。
そして、そう願った。

『………ディアッカ』

いつもと変わらない柔らかな声………
暫く時間を置いたアスランは口を開いた。

『彼女を連れて歩いているのは俺の意志だよ』
『お前!!?気でも狂ったかッ!?』

俺が言いだす前に、イザークの方がキレてた。

『プラントをあちらこちら破壊して………まさか、その女の為にやったんじゃないだろうな!?』
『おいおい………イザ……』

再び沸騰し出したイザークは止まらない。

『レジスタンスの拠点だと言うことはディアッカからかも聞いた!!!
お前と……お前の家族のデータベースが何回も削除されていることも!!!』
『よせ!!!イザーク!!!それは個人情報だ!!!アスランが法廷で訴えれば、お前も………』
『黙れディアッカッ!!!』

俺が肩にかけた手をイザークは振り払い叫んだ。

『俺は母上の罪を背負っている!!!
アスランと根本は変わらん!!!
大事な仲間をこれ以上亡くしたくは!!』

.

Velocity Night-05-につづく>>>





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