2009年書き下ろし

Velocity Night-06-vol.6 迷い子になる明日

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蠍座と乙女座の平衡定数の続編になります。
ラスト未完成です。

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このお話しが楽しめたら、【】をクリックしていただけると、次回のお話しへのやる気に繋がります。

Velocity Night-06-

vol.6 迷い子になる明日

『………イザーク』

それぞれのモビルスーツに乗り込んだイザークとディアッカは交わす言葉もなかった。
心にぽっかりと穴が空いた気分だった。
これは………報告すべきことなのだろうか………?
それすらも判断出来ない。

『ディアッカ………』

近づいたプラントはモニターからはみ出ている。
漸く口を開いたイザーク。

『アスラン………戻そう』
………あれは………アスランじゃない………

アカデミー………

………アカデミーで傷ついた時の………
荒れる寸前………

.

『………そう……か』

ディアッカはそうつぶやきながら、そこまでアスランは酷い状態ではないと感じていた。
別れ際の状態を、再び思い出した。

いつもと変わらない柔らかな声でアスランは答えた。

『彼女を連れて歩いているのは俺の意志だよ』

キレたイザークはアスランに詰め寄った。
戦争犯罪者の親を持つのは………同じ立場だと………

『………同じ……か』

翠の瞳が、歪んだ。

『イザーク………俺と君は違うよ』
『………罪の重さに違いはないッ』
『罪………じゃない』
『………ではなんだと!!!』

カリカリしているイザークは直ぐに反応し………それに対するアスランは柔らかな笑みを浮かべる。

『君と………抱えるものも、痛みも………違うんだ』

柔らかく答える声とは裏腹に、翠の瞳は苦痛にさらされていた。

『捕まえないのか?イザーク?』
『………ッ』
『悪いけど………時間がないんだ』

穏やかに答えるアスランは連れの女性の肩を抱いて歩むことを促す。

『アスラン……何をしたいんだ、お前………』
『……さぁ……なんだろうな』

のらりくらり言葉を交すアスランに、俺もつい怒鳴ってしまう。

『短命種の研究はしている……今、マウスでips細胞移植……』
『アスッ……!!!』

俺が話しだした途端、急にヘルメットを取った。
無重力空間に一瞬にして藍色の髪が広がり、溶けていく………
女性のヘルメットのバイザーが開き………

女性の………見開いた瞳………翠の………瞳………

音もなくしまった女性のバイザー。

『行こう………アリア………』
『『………』』

アスランが………
………女……に………

キス………を

.

俺にとってショックなのは、アスランがオーブの姫以外の人間とキスしたこと………
考えたことも………なかった
この間、無人の戦略軍事衛星を破壊した時だって………
首から下げていた金のチェーンを俺達はからかって………

………あれからまだ三ヶ月………だぞ?

………そんなに

ヒトの心って変わるのが早いのか?

………アスラン………

.

『………呼吸………苦しくない?』

コックピットに座ったアスランが話した一言目はそれだった。

『………大丈夫』

ヘルメットのバイザーを開けたから………ヘルメット内の酸素が少なくなったのを気にしているのだろう。
………アスランはヘルメットまでとったんだから………パイロットスーツ内の空気すら漏れている可能性があるのに………
自分よりも他人の心配をする………なんて………
答えると薄く笑う彼は、機内調整を急がせていた手を一瞬止めた。
アスランの膝の上に座り、ようやく動かなくなった右肩に頭を預ける。

『………ひとつ、聞いてもいいですか?』

再び………右肩が動く。
ヘルメットを取り外し、頭を軽く振るアスラン。
藍の髪が、頭の動きに合わせて乱れる。
コックピット内に、調合された酸素が行き渡ったのだろう。
寄り掛かる胸が、大きく膨らむのがわかった。

『なに?』

アスランの両手が私のヘルメットに触れる。
ポーカーフェイスの表情が、左肩の傷の重さを物語っていた。

『なぜ………アリアと呼んだの?』

.

『………私の名前はエオリアなのに………』

痛む左肩を動かし、ヘルメットを取ってあげた少女は呟く。
グレイアッシュの髪が無重力に舞う。
顕になった彼女のおでこに、俺は口付ける。

『………内緒』
『………そう』

少女は目を伏せ、数回瞬きした後、俺を見上げる。

………俺と………同じ

翠の………瞳………

『じゃ、これには答えて?』

真っ直ぐな視線は俺から離れない。

『さっきのキスは?』

.

『カガリお嬢様?!』

階段を駆け上がる音が………すごく響いたのだろう………
マーナに帰ったのも黙っていようと考えていたのに………
カガリの考えは既に失敗だった。
着替えとか………は、軍本部に替えはあった。
先日帰宅して………その時はエリカの言葉が気になって、書庫に直行していたのだ。
主が出掛けたままの部屋。
整理された部屋。
クロークを開ける。
正面にかけてある制服が二つ。
それをクロークから引っ張りだしベッドに投げる。

………アスランのことだ

データにして………

誰にもわからないトコロへ隠すに違いない!!!
ポケットをひっくり返し、制服の衿を指でなぞっても………紙やメモリチップの感触はない。

『………な……んで………』
………あいつの……性格………

………(幸せだった……カガリ……気持ちよくて……)……

.

アスランの部屋の前に不安気に立っていたマーナの隣を走り、自分の部屋の扉を開けた。

………アスランが………最後に休んだのは私と………

机の上の宝石箱を開く。
相変らず………公務用の物ばかりが目立つ。

一緒に買ったものは大抵身に付けて生活していた。
赤い石のついたプラチナの指輪も、ネックレスに通したペアリングも、クロノグラムは左腕に………

………そう言えば、あいつ………三ヶ月前………

わざと指輪を私に預けて………

.

『マーナッ!!!』

部屋の入り口に立つ女性を呼ぶ。

『アスランから………何か預かったりしてない?
例えば指輪………とか』
『アスラン様……からですか?』

マーナの反応で………アスランはここに郵送物を送ってはいないようだ………預かりものも………。

あぁ………

………あいつ、何かを……

絶対何かを自分の片割れとして………

『あの………お嬢様………』

マーナはポケットの中で何かを握り、取り出した。

『先日ベッドメイクした時に、枕の下から………』

………また………

マーナの手のひらに転がるもの………

………なんで………アスランは………

胸から何かが押しあがり、喉を詰まらせる。
その流れはさらに駆け巡り、カガリの涙腺をゆるませようとする。
押し黙ったまま………カガリはマーナに近づき、彼女の手のひらのものを摘み上げた。

微かな金属音………

それは、カガリの瞳と同じ色の光沢を放ち続ける。

………私は………アスランにとって……なんなの?………

幸せな時と同じ輝きを放つ、揃いの小指用ペアリング………
いつも持ち歩けるように………と、アスランの計らいで買ったチェーンネックレスさえ、カガリにとっては気持ちを沈めるものでしかなかった。

.

『エリ………カ………』
『あら!!!』

モルゲンレーテに戻ったカガリは、足をあげるのも億劫な状態でエリカ・シモンズの部屋の扉を開けた。
カガリの涙で冷たくなった頬を両手で挟み、ぐりぐりするエリカ。
わざと痛くしているのに………反応を示さないカガリに、エリカは瞳を寂しげに瞬く。

………ホント………

近くにいるときほど………
気付かない。

遠く離れてから気付く………

何回繰り返すのかしらね………カガリ様は………

………アスランは
とっくにわかっているから………

失いたくないものを取り返しに行ったのに………

.

『カガリ様………そろそろ支度しないと………』
『………そ……だな』

今にも崩れそうな表情………
白くなる程に握り締めた両方の手………

『なぁ………エリカ………』
『どうしました?カガリ様?』
『私はオーブを秤に掛けられるのだろうか?』
『…………』

彼女が求める答えはなんだろう………
私のように………子供に急かされて………帰るような生活を………?
家庭に納まれとは………とても言えない。

………そう

彼女にとっては今が決断すべき時なのだ!!!

アスランの………為に………

.

『カガリ様………そのことは私が決めることではありませんわ………』

彼女の顔を挟んだ手のひらを、再びぐりぐり回す。

『経験者から言わせていただきますと………私は子供を泣かせるのも上手ですが、あやすのも上手いですよ』
『………エリカ』
『さ………アスランの落下地点、算出しますよ』

たった今、脳裏に焼き付いたカガリ様の泣き顔。
瞳の奥に、希望はなく………不安が揺れ続ける黄金の色………
そんな情景を振り払うように………私はキーボードを叩いた………が

『………どうしたのかしら』

………落下どころか………

アスランとの………連絡手段が………

『………エ……リカ?』

………あぁ

なんてことなの………

.

『マードック曹長………緊急事態よ!!!
申し訳ないけど、やっぱりロケットブースターを二台付けて!!!』
『!!!エリカ!?』

顔色を変えて問い掛けするカガリを放置して、エリカはマイクに向かって話し続ける。

『それと、キラ君、ラクスさんをこちらに………あと、シン君も!!!』
『エリカッ!!!』

思いっきり上着を引っ張られても動じず、エリカはキーボード操作の手を遅めない。

『カガリ様………一度しか言わないわよ』
『………ぁ……あぁ………』

返事するカガリの声は、無意識だろうがしっかりと震えていた。
そして、エリカの伝える声も、無意識だろうが小さかった。
いつもの………何倍も………

『アスランの………』

………生体反応がないわ

.

『嘘だ!!!』

カガリの悲鳴を突き破るように飛んできたのは男の声だった。

『あいつが死ぬハズないじゃないか!!!あいつが!!!あいつがッ!!!』
『シン………』

肩で息をするキラが、シンの肩に手を置く。
走って来たのか………呼吸を整えるキラ。
少し待つとやはり慌てて部屋にラクスとアマギ、キサカが入ってきた。
部屋の人口密度が一気に高くなったにも関わらず、キーボード作業を止めないエリカ・シモンズ。

『主任………アスランに何が起こっているのですか?』

キラがゆっくりと口を開いた。

.

『………アスランには出掛けた痕跡があるの………』

壁面モニターに、アスランが根城にするコンテナからのデータが映し出される。
単なる数字の羅列を、シモンズは部屋にいる人間に分かるように説明をする。

『………まずは着艦………ここでアスランの身体の状態が読み取られている。
入り口にセンサーを付けてあるから………アスランじゃないと開かないのよ、このコンテナ………
健康な状態で………帰ってくるならいいけど………』
………あのコの場合、健康なら情報収集………続けるから………

そう、シモンズは話ながら、モニターの数字の色を反転させる。

『アスランの身体の状態………あまりいいとは言えないみたいね………同伴者を連れてきた時に何かあったみたい。
そのコにシャワー浴びさせて、自分は身体の治療をしてたみたい………でも』

瞬間、口をつぐんだシモンズ。

『………でも……?』

脱力したままのカガリを、折り畳み椅子に座らせながらキラは尋ねる。

『使用したものは、消毒剤だけなのよ………こちらに緊急連絡してきてないから、手術は必要ではないものだろうけど………』

.

モニターを見つめながら、シモンズは手を動かし続ける。

『薬の名前は………わかりますよね?』

座ったカガリの肩に手を置いたラクスが口を開く。

『消毒はしたみたいだけど………治療した形跡はないわ』

数字の羅列を解析したシモンズは新たにモニターにウィンドウを出す。
数字の羅列は化学式に変換され、画面内でモジュールが踊りだす。

『………国際救難信号……アスランはこれに呼び出されて、出掛けたみたいね』
『データ………取れます?』

明らかに蒼白なカガリの横顔を視界にいれながら、キラは問い掛けた。

『………音声データは取れないのよ………』
………これの設計はアスランが全て作って………チェック入れたものだから………

シモンズは小さく肩を落としながら問い掛けたキラに振り向いた。

『後々のこと考えて………わからないように色々仕込んだんだけど………ばれちゃった………の』

………盗聴機はね

.

『………ブラックボックス………回収しても、レコーダーに残っていればいいけれど………』

エリカ・シモンズは哀しい笑顔をキラに向けた。
回収するころには残されたレコードは新しいデータに書き替えられているだろう………
現実的には不可能だった。

『アスランは同伴者と共にジャスティスに乗ったわ………』

再び………モニターを見てキーボードを叩くと、今から話す内容部分の数字羅列を文字色反転させるシモンズ。

『そして………一回降りた。
電磁波の鼓動反応反射が………少し遠いみたい………』

………何のことを言ってるの?

未だ………焦点が合わず、放心したままのカガリ。
そのカガリの肩に手を置くラクスに、キラは視線を送る。
兄弟機であるインフィニットジャスティスにあるものはストライクフリーダムにも搭載されているハズ。

電磁波が出るようなものは動力である核以外、思い浮かばない。

『?主任?』

不安なラクスの視線を受け取ったキラは口を開く。

『電磁波探査装置を………ジャスティスに搭載させたわ………核融合炉があるから………座席部分にね』

皆が見つめるモニターに、新たにウィンドウが開き、今度は設計図が出てくる。
その設計図の一部をクリックすると、アニメーションが流れる。

『惑星生命探査で使われるモノよ。
心拍と呼吸で生存確認するしかないのだけれども………』
『………あすら……んは………』

か細い声が聞こえた。
注意しなくては………聞き取れない声。

『一度ジャスティスから降りて………その後、同伴者と伴にまた機乗してるわ』

………その後
生命探査装置が作動してないの

………なにも

………なにもみえない

きこえないよ

こえが

ねぇ……

きこえないんだ

………アスラン

きこえないよ

おまえの………こえ………

カツッ………ン

金属音が転がり、床に広がる。
キツく握らしめていた手のひら………
爪が食い込み、血の滲んだ手のひらから落ちた黄金の………紅き色に染まりし指輪………

………(………本当は………こんなのつける必要がない日が早くくればいいんだろうけど………)………

あの時………お前は何を思って呟いたんだ………アスラン………

まるで………
転落するカガリの想いを表すように、果てなく転がりだす指輪。

途切れ途切れの赤い軌跡は………同じく赤に染まった黄金のチェーンによって、進行を押し留められるのだった。

.

『カガリさんッ』

呆然としたままのカガリに、彼女の背後から両肩に手を置くラクスが問い掛ける。

『アスランを探しに行きましょう!!!』
『………な……んで』

ゆっくりと目蓋を閉じたカガリ………
露を孕んだ長い睫毛が開くと、真珠のような………大きな涙が頬を流れた。

『私には無理だ!!!』
………私には………

アスランが私をどう想っているのかもわからない!!!

アスランが何を考えているのか私はわからない!!!

わたし………

………私には………

『私にはなんの力もない!!!』

自分の目先だけでいっぱいの私に………
だから………アスランは私に………

………オーブにいろって………

.

『アスランにはカガリさんが必要なんです!!!
大事でしたらアークエンジェルを動かしてでも!!!』
『カガリ様!!!
あの時のように“私に力を”………と………皆、動きます!!!
カガリ様の為ならば!!!』

尚もしつこくラクスはカガリに説得を試みる。
そこに………アマギも口を挟む。

今更………闇のような後悔が襲ってくる。

辞表を突き付けてきたあの朝………

私の身体を熱く駆け抜けた彼の奔流に、乱され、酔わされ、波に溶かされた。
快楽の海から目覚め、開いた瞳の前に映る………微かに潤んだ翠の瞳は常に変わらず………私を優しく見つめて………

………やさ……し……く…

『駄目だ!!!ダメだ!!ダメだ!!ダメだ!!!』
『………カガリ』
『カガリ……さん………』

取り乱すように叫ぶカガリに、キラは驚き、彼女の正面に跪く。
いつの間にか再びキツく握り締めだしたカガリの手を、キラは両手に包む。
落ち着きを取り戻させるように、そっと撫で続ける。
キラは、強ばりがとれてきたように感じたカガリの手の甲を下に返し、手のひらに拾い上げた黄金の指輪とネックレスを置き、指を曲げて握らせた。
擦れ擦れのカガリの声は、すべてが哀しみの色に満ちていた。

『あ……あッぃっ……は……』

しゃくりあげるカガリの声。
ガラス玉のような涙は、止まることなく落ち続ける。
しばらくして………呼吸が整い始めたカガリは、小さな声を溢した。

『あ……あいつは……も………民間人だ』
『………』

静まりかえった部屋に、哀しみに疲れた声を必死に絞りだすカガリの声が、そっと吸い込まれていく。

『………私が………私が』
………私の権限で………あいつを………アスランを………

退役させたんだ………

静かな時は穏やかな日々を懐かしみ、遣り切れない責めを無言のまま積み重ねていった。
一瞬の判断が全ての過ちだと………彼女を責めても、アスランは他の手段を考えたに違いない。

彼が描いたシナリオは………その時にはもう完成を迎えていた………

誰が………アスランの用意したシナリオと言う名のバースデーケーキの蝋燭を吹き消すか………

それだけの問題だったのだ。

『………アスランは貴方の性格をよくわかっていたのよ………カガリ様』
『………エリカ』

モニターからの光を背に受けるエリカ・シモンズの表情は、カガリからよく分からなかった。
ただ………優しさを含んだ冷静な声は、カガリに底知れぬ恐怖を与えた。
再び口を開いたシモンズに、カガリだけでなく、部屋にいるもの全てが引き付けられていた。

『アスランは………』

………一番軍に迷惑をかけない方法を考えたのよ………

哀しく響くその声に、シンは目頭が熱くなってきていた。

………なんで

………なんであのヒトは………

………(……俺の……カガリ……
頼むな……)………

俺の目の前で………惜し気もなく………いとおしく………

代表の身体にキス、してたじゃないか!!!

あ………あんな……に………

熱の籠もった翠の瞳で………

なのに、なんで自ら代表を突き放す!?

『民間人になれば………貴方は動けないもの』

………ね?

………カガリ……様?

.

『………』

何も………カガリは言葉を発することはできなかった。
返事のしようのない彼女は、ぽたぽたと涙を溢し、床に大小の水玉模様を描いた。
そんな彼女に更に追い打ちをかけるようにシモンズは話す。

『………軍を………貴方の個人的な考えで動かすことはないでしょ?』

胸が………張り裂けそう……

何故私は………

彼を解らないままでいるの?

風力に屈したガラスが、一瞬で砕け散るように………カガリのキモチは壊れて行った………

『………あす……』

無意識に発した彼の名前には………感情が乗ることがなかった………

『いいコよ………いいコねアスランは………本当に、失うのは惜しいわ』

………うしな……う………

私がアスランを守ると言うと………あなたは………

直ぐに俺が守ると………言って口付けを………

初めて口付けを交わしたあの日………
私はアスランを守るって………

あの時、守りたいと思った。

漠然とした………国とか………理念とかじゃなく

ただ………

………(お前の名前は?)………

………(アスラン)………

………そう………あの時………

ただ純粋に、お前と言う存在を知りたかった。
守らなきゃと感じた。

あの時の………キモチ………

『……ッ……あすら……』

………(幸せだった……カガリ……気持ちよくて……)………

翠の瞳が輝き、何度も私を抱き締めた………腕が………また………

………(愛してる………今も………これからも………ずっと愛してる………)………

愛の囁きが………幸せな瞬間を呼び戻し………

………(どこにも行かないで………カガリ………此処にいて)………

伏せられた長い睫毛が、私の頬をくすぐる。
ついばむような口付けと、鼓動をあげていく口付けが続いて………

………(お願いだから……此処に………いてくれ………)………

.

泣きじゃくるカガリを見上げると………やはりその背後で、苦しみに満ちた表情を讃えたいとおしいと感じるラクスが見えた。

『………主任………この部屋は電波妨害つけてる?』

キラは口を開いた。
自分の声が、冷静なことに内心驚いた。
何を言おうとしているのかわかっている。
誰を一番傷つけるのかもわかっている。
そこまでやる必要があるのかも………わからない。
でも、ここにアスランがいなきゃ何も進まない………

………何も

『今、切るわ』

シモンズは音をたててボタンを押し、数秒キーボードを叩く音を響かせた。

『………ありがとうございます』

ポケットの中から携帯電話を取出し、プラント軍部に直接連絡する。

『………キラ・ヤマトだ………僕の声、聞こえる?』

.

『イザークとディアッカにつないで………直ぐに』

立ち上がったキラの声が頭上から聞こえてくる。

私………キラとじゃれてるアスランも………好きだったんだ………

キラがアスランをからかって………逃げるキラをアスランが追っかけて………

『モビルスーツデッキ?それは好都合………早く!!!』

なんだろ………キラの声………
いつもと違う気がする。

ちょっと………怖い………

『………キラ………』
『君が言うことではない。
悲劇の幕引きの責任は………付き合いの長い僕がする………』
『………』

頭上で交わされた会話。

なんの………話し………?

『キラ……さん?』
『……なに……する……のキラ………』

様子がオカシイ事に、シンも気が付いたようだった。
キラの………感情のない声が静かに響いた。

『イザーク………特務命令だ………』

………アスラン・ザラの緊急捕獲を命じる
手足がなくなっていてもいい………

意識が………あれば……

最悪、遺体でも構わない

必ず確保を

.

はっきりと出たキラからの言葉。
誰も………反論は出来なかったし止められは出来なかった。
カガリにはアスランを止める権限は何も残ってなかった。
自ら探しに行く………それすら、自分自身の決定力はなかった。
己の立場が………自らを苦しめている………

『………シン』

キラはラクスに一度視線を送る。
フェイズであるシンの管轄は議長であるラクスの権限が必要なのだ。
ラクスはキラに瞬きを送り、言葉なく了解を示した。

『はい』

ヒトコト、返事をしたシンにキラは命令を下す。

『遺体になっていたとしても身元確認者は必要だ』

………カガリを連れて、先に宇宙へ行って………

『………代表………を』
………俺に………アスランの代わりを………

あんなにアスランが愛している………ヒトを………

『キサカさん、主任………僕達はプラントの人間。
オーブの元准将の遺体確認までは出来ませんので………軍事協力をお願いします』

カガリを挟んで頭を下げる………今やプラントを動かす二人。

『了解した………なんとか首長会を押さえよう』
『軍部は依存ありません………カガリ様をお願いします、キラ様、ラクス様………』

キサカ、アマギが返答する中、シモンズはカガリに近寄った。

『さ………カガリ様………ブースターは付いたわ』
………アスランに逢ってきて………

立ち上がったカガリの手から、再び零れ落ちた指輪付きの黄金のネックレス………

『………』

拾い上げたシンは、留め具を外し、カガリの首にかけた。

『このネックレス………あいつに………アスランに返しに行こう』
………君を………こんなに苦しめる………あいつに

力の入らないカガリを抱き抱えるようにシンとアマギは部屋から出ていった。

『話し………あるんじゃないの?キラ君』

シモンズはわかっているのよ………と言いそうな顔だった。

『………どのチャンネルなら使っていいですか?』

即座に返事をするキラ。

『Vコード251でお願い』

シモンズの言葉そのままにキラは電源の入りっぱなしの携帯電話に伝える。
数秒も経たずにモニターにノイズが走り、二人の男が映った。

『………聞きたいことがあるんだ、イザーク、ディアッカ………』

.

『………聞きたいことがあるんだ、イザーク、ディアッカ………』
………何故アスランを捕まえなかった?

モニターに映った二人に、直ぐに質問をするキラ。

『………捕まえられなかった』

しばらくの沈黙の後、口を開いたのはディアッカだった。

『アスランの気持ちを考えたら出来なかった………』

アスランが取り巻く現在の環境を全て把握しつつあるキラにとって、その言葉ひとつで充分理解は出来た。
コーディネーター故の遺伝子異常による短命種疑惑、プラント内爆破犯………

『会った時の………状況教えて………それと』

彼らの上官と言うより………アスランを助けたい同志………と言う立場で、アスランの話しをするキラ。

『俺も知りたい………誰なんだ………あの女………』

イザークが真一文字に閉じていた口を開いた。

『お……んな?』

一瞬にして開いたアメジストの瞳。
イザークは話しを続ける。

『………俺達アカデミーからしかアスランの事は知らん。
交友関係はお前達の方が分かるだろ』
………【アリア】って言う名前の………アスランと同じ瞳の女だ………

『………アリア………?』

先に反応したのはラクスだった。
口の中で呟いたラクスに、キラは尋ねる。

『コペルニクスの幼年学校には、翠の瞳の女の子はいなかった。ラクスは………知ってるの?』
『いえ………アリ…ア………』

目を伏せ、口元に手を当て、否定しながらも考えるラクス。

『アリアは………』
『………独唱………よね』

シモンズが呟いた。

『あ………オペラの………』
『えぇ………』

キラの声に、更に思慮深く考えるラクス。

『………あいつがそんなに音楽に精通しているとは思えんがな』

モニター内のイザークが眉をひそめる。

『………なんで同伴者の性別と瞳の色がわかったの?』
『ぇ………あ……あぁ………』

モニター内の二人は顔を見合わせる。
あまり話したくない内容なのは雰囲気で伝わった。
口をつぐんでしまった二人ではあったが………片眉を上げたディアッカが、イザークの肩を叩き、口を開いた。
酷く言いずらそうに………頭を少し掻いた。

『………興奮したイザークが………』
怪我した部分をつかんだんだよ、アスランの。
その時に、声を上げたのさ、その子………

『………怪我した部分って』

モニターに問いただすキラ。

『肩………左肩だ………』
………もしかしたら、肩、上がらない状態かもな………
答えたディアッカは苦しそうな顔をした。

『その後俺も興奮して………あいつ、怒鳴っちまった………』

そしたら急にヘルメット外して………
………女にキス………しやがった………

『………キラ………』

ずっと考え込んでいたラクスが口を開いた。

『………アスランは誰彼構わず口付けをする人間じゃありませんわ………』
『………そ………それは僕だってわかっているよ、ラクス』

ラクスの発言に、思わずドキッとしてしまったキラ。
それに………論点からかなり外れて………いない?
ふんッ………と、腕組みするイザークと………目を見開くディアッカはそのまま顔色が真っ白になる。

『………アリア………ですか』

再びラクスは考えだすのだった。

.

『ロケットブースター………もう一台ついたわよ、キラ君』

エリカ・シモンズはキラに伝える。
イザーク達との通信で、同伴者の性別はわかった。
考え込むラクスを連れてキラは立ち上がる。

『主任………』
『なぁに、キラ君』

ゆっくり微笑むシモンズ。

『カガリに発破かけてくれてありがとうございます。
生命探査装置………異常停止のエラーじゃないんですか?』
『………黙っていてくれてありがとう、キラ君』

シモンズはモニター操作を始める。
先程みたインフィニットジャスティスの図面が出てきて、コックピット部分がズームされる。

『同伴者………女の子みたいだけど………何かされている可能性があるわ』
『三ヶ月前、アスランが襲われた時みたいな事ですよね?』

軽く顔をしかめたキラは尋ねた。
シンからの報告はラクスに伝えられ、ラクスの口からキラに直接伝わっていたのだ。

『………そう……ね』

弱々しく微笑むシモンズ。

『………その同伴者の女の子にもアスランを殺すようなプログラムが埋め込まれているかはわからないけれど………』
『………アスランを………殺す………』

アスランと戦った時の緊張感が、瞬時に身体を駆け抜け、恐怖に鳥肌がたつ。
お互いがお互いを示された敵として………笑いあった幼き日々を打ち消した16の日………。
黙ってしまったキラに、慰めるようにシモンズは言葉を紡いだ。

『………アスラン………あの子は自覚しているわ………』

………自分の命が狙われていることを

.

明確に、命が狙われている親友なのに………直ぐに助けることの出来ない歯痒さに、キラは唇を噛んだ。
口の中に広がる血の味で………キラは冷静さを取り戻していく。

『………それは囚人の事件の時からでしょうか?』
『いいえ………』

シモンズはキーボードパネルを叩きながら、キラの質問に答えていく。

『………私が聞いたのは衛星破壊の時に襲われた時よ』

………衛星………

『………あ……あの時………』

あの………単独行動………

説明してくれない理由………

それは………僕達を心配させたくないから………

また………独りで抱え込んで………

………どうしてなの?アスラン?

君は………僕達にいくつ隠し事を抱えているの?

一気にキラの心は重くなる。
助けを求めるように、傍らのラクスに目を向けると、蒼白になった彼女がいた。

『………相手も………準備周到ね』

淡々と話すシモンズの言葉が胸を突き刺す。

『………』

なんて答えていいかわからない。
あの衛星爆破は………僕がプラント生存の為に、オーブ軍………カガリに次いで次位の地位にあるアスランを呼んで………

それじゃ………僕は、彼を知らぬ間に、踏み込まなくても良かった現実に、わざわざ導いてしまったのか!!!

頭が………真っ白になる。
カガリの………双子のカガリの大事なヒトを………僕は………

『アスランがコンテナに戻ったら連絡するわ』

肩を叩かれシモンズに告げられる。
なんとか、意識を現実に戻そうとする。
でも………

『ありがとうございます、主任』

そう、告げるのがやっとだった。

シモンズは軽く僕の背中を叩いた。
その叩き方は優しく………思い詰めなくていいと伝えていた。
シモンズはゆっくりと口を開く。

『それと………コンテナのアクセス権、変更するわ』

………コンテナ?

なんの為に?

『………何か必要なのですか………そこに………』

アスランの足跡しかないそこを………。
キーボードを操作しながら、シモンズは振り向いた。

『今、あそこにしかないのよ………』
………アスランの輸血用血液………

『ぇ………』

ラクスが、僕の右腕を両手で掴んだ。
頭が真っ白になる。
高鳴る鼓動が、鼓膜を覆い尽くす。
………目の前にいるのに………シモンズの声は、遠くから聞こえるよう………

『………全てのラインを彼用に回しても………怪我の具合によっては足らないわ』

………ね………アスラン?

どれが………現実………?

.

『準備はいいかい?』
『問題はありません』

余裕ある艦長の返事に、食堂から持参したドリンクを、座席に座って口にする。
指揮官席に座った私に向き返り、艦長は口を開く。

『マドモアゼルは………』
『彼女がいなくても問題はない』

私はストローを再びくわえる。

………いや

………いないことが今は有難いことなのだ

喉を通るミネラルウォーターが、酷く冷たく感じる。
たいしたことではない。
単なる出撃だ。
………予定通りの。

何に………私は緊張しているのだ………。

………マドモアゼル………

我々の女王。
………彼女が一緒にいるのはアスラン・ザラ
そして彼は………
彼女だとわかって、危険を犯して攫ったのだ。

『マドモアゼルは直に戻る………心配することは何もない』

そう………全ては計画通り………

.

………が………外泊届け………

携帯電話から………いつもどおり、連絡すれば………いいだけ………だろ?

………さっきも………
したじゃないか………外出届け………

そ………そうだ………よ

こ………こんなことに………俺は………

こんなことで、指先を震わせていては………

………俺は

ザフト兵に………なるんだ………から

.

昼休みに、次の授業の教科書を置いてきたのに気が付いた。

アカデミー卒業間近なC.E.70年6月………
血のバレンタイン事件が起こる前にアカデミーに入った俺は、7月卒業を前に試験勉強をしていたのだ。

『………いたのか………アスラン』
『サフィーラ………』

ベッドからわざわざ起き上がるアスランを見て、様子がおかしいことに気が付く。

『………体調悪いのか?顔が白いぞ』
『ぇ………』

翠の瞳が大きく開く。
あどけなさの残る顔が、そのまま凍り付く。

『薬、飲んどけ………俺に移すなよ』
『………すみません………』

だるそうに話すアスランに、俺はそんなに構っている時間はない。
ついでだから………持ち歩き不可の携帯電話のメール確認をする。

………着信……?

かけてくる相手は決まっている。

決まって………いる………。

.

………サフィーラ………

お父様が………

お父様が………

………撃たれて

.

『サフィーラ………?』

ゆっくりとしたアスランの声が、俺を現実に戻した。

………今のは………姉様だよ……な

なんで………看護師の姉様が………

『アスラン………俺、外出する』
『どうかしたの?』

薬を広げだしたアスラン。
俺は急ぎながら冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して投げ渡した。

『外出届けは移動しながら提出する。誰かに言われたら伝えてくれ』
『了解した』

俺は、アタッシュケースに身分証明書と貴重品を突っ込んだ。
乱暴にケースを閉めて立ち上がる。

『俺が戻る前に、顔色だけでも治しておけ………教官に目を付けられるぞ』
『ありがとう………サフィーラ………気を付けて』

この時は………同室の後からアカデミーに入った後輩としか………
俺は思っていなかった。

国防議長のパトリック・ザラの息子だろうと、現PLANT評議会議長の娘ラクス・クラインの婚約者だろうと………関係なかった。

俺と同じ………プラントを守る為に命をかける未来の同胞としか考えていなかった。

現実に………出会うまでは。

.

白い布がかけられていた………。

………な………んで………

コーディネーターの力を持った者が………
コーディネーターの世界で殺されなきゃならないんだ………

『サフィーラ………』

しんみりしている姉。
死を職業柄見てきた為か、取り乱してはいないが、目には泣き腫らした跡が如実に残っていた。

『姉様………父様は………なん…で………』
『狙われて………いた……みたい』

震える姉の………声。

『第一世代のコーディネーターに………』
『父様だってッ!!!コーディネーターじゃないかッ!!!』

霊安室で、俺は叫んだ。
響き渡る声は反射し、父様にかかっていた白い布を微かに揺らしたように見えた。

『サフィーラ………』

俺の行動を諫めるように、姉は俺の名前を告げた。
力を入れたくても………入り方がわからない………
そんな話し方だった。

『ぶ………ブレイクジーンじゃダメなのかよ………姉様………』

俺は手を握り締めた。

どうしていいかわからない………

俺達は………俺達家族はブルーコスモスから逃げて………プラントに来たのに………

プラントは完全なるコーディネーターのみを必要としだしている!!!

『………シーゲル・クラインは裏切ったんだ………』

俺の呟き声に、姉は無反応だった。
遺伝子情報の蓄積をメインとするこの世界。
必要な遺伝子を有しない人間を排除すべき組織が誕生しようとしていた。
その先鋒として………父が………

血のバレンタイン………

数個の核弾頭が打ち込まれた農業用コロニー………
一瞬で死滅した約24万人のコーディネーターの同胞達は………

新たな24万人以上の地球圏の命を地獄に引きずり込もうとしていた。

.

ブレイクジーン………

不完全なコーディネーターもしくは人為的にコーディネーターとしての成長を抑制された人々。

後世に己の遺伝子を引き継いだ優秀な人間がいたら………
その人間が、歴史に名を残す英雄となったら………
………そんな願いを込めて、コーディネーターに生まれさせた両親もいるだろう。
俺の両親も………気紛れから生まれた人間………

父親の家系は商人だった。
損得の釣り合いを取ることが楽しみのひとつであったのだろう。
それを父に強要させた。
半分コーディネーター、半分ナチュラルとして………

遺伝子は操作させられた。

.

しかし………予想されなかったことが起きた。
成長期に入った父は、自分の誕生の秘密を知った。
父の反骨精神は中の上辺りまで、コーディネーター能力を伸ばした。
父はコーディネーターとして生きていった。

父は母と出会った。
コーディネーターを認める北欧の地………。
頭の回転のいい笑い顔がとても幸せそうな女性………
デートを重ねるに連れ、彼女がよく口にするものに気が付いた。

………(私………長く生きられないの)………

そう、話ながら………カプセルを二つ口にいれ、水の入ったペットボトルを開けた。
薬を流し込む彼女を見ながら………父の胸は不安で一杯だったそうだ………
昔、みたことある薬のパッケージ………
研究所勤めの友達が話してくれたこと。

………(私………失敗作なの………コーディネーターの)………

………(これを飲んでないと………一部の細胞が急速に………)………

父は、彼女の話を途中で止めて………話したそうだ。

………(………君は気付いていたかも知れないが………)………

二人の遺伝子は………絡み合い………
姉と俺を生み出した。
そして………コーディネーターになりきれなかった母は………

………(私………幸せよ………こんなに………生きれたんだもの………)………

母の手から………
持ちきれない程の錠剤がこぼれた。
………………その数は

………20数種類に及んだ………

.

見たことのない神様へ

この………ぽっかりと空いてしまったこころはなんですか………

わたしは………このかなしみを愛するには………なにをしたらよいでしょう………

.

父は、コーディネーターとナチュラルの間を調整した。
ナチュラルの間違ったコーディネーターに対する知識と認識を改めさせ、選民思考を根付かせ始めたコーディネーターに、ナチュラルとして欠陥があるから統制させる為に遺伝子を弄ったんだ………と。

コーディネーターには厳格な言葉を紡いだ。

単なる………一商人であれば………よかっただろう………
父の言動は………
取引先の者の感情を時に逆撫でた。

ブルーコスモスの勢いが強くなった頃………

………(………私も………君の言動には賛成だ………既に、コーディネーターと言う種族の未来に陰りが出てきている………)………

父は………プライベートで地球に降り立ったシーゲル・クラインの差し出した手をとった。

そして俺は………ヒトリでも多くの仲間を守りたくて、ザフトに入隊を………

.

あれから………幾つ月日を数えただろう………

同胞であるコーディネーターに父は殺され、俺はアカデミーに退学届を提出した。

父の復讐をどのような形で行うかだけ考えていた。

パトリック・ザラの行動を監視し………彼が年に数回訪れるところを発見した。
私はそこに………勤めるよう高度な知識を身に付けるべく、短期プログラム講習を幾つも重ねて修得した。
一人前のコーディネーター遺伝子ではないにしろ………全て修得するに対した時間はかからなかった。

そして俺は就職した。
コーディネーター達の設立した遺伝子研究所に。

その頃………地球を舞台に連合の奪取したモビルスーツが戦闘を行っていた。

かつて同室だった………アスランが………地球に。

.

収容したインフィニット・ジャスティスの機体………

配備させた親衛隊は小銃を構えながら待機していた。
外部からの緊急開口をしようと整備班が機体に取りつこうと準備が整った頃、内側からハッチが開いた。

『銃を下げろ!!!私は無事だ!!!』

コックピットから上がってきた座席の脇に立つ少女は大きな声を上げた。

『お帰りなさいませ………マドモアゼル』
『サフィーラ………ICUにて拘束しておけ………意識はあっても動けない筈だ』

近付くサフィーラに翠色の瞳を細め、歩み寄る少女。
グレイアッシュの髪が大きく揺れ………

『サフィーラ………確認したいことがある。後で私の部屋へ』

男の頬に落とされた唇と囁かれた言葉。

………今更………何を確認したいのだ………

コックピットでぐったりしている男に近付く。
左手がだらしなく開かれ、右手は右脇腹を押さえてはいるが………小さな血球が絶え間なく宙に浮かび続いていた………。
男の顎を上げると半開きの唇が僅かに動く。
閉じられていた瞳が薄く開く。

『………サフィ………ラ』
『パーティーチケットは………楽しめただろう』

俺はアスラン・ザラに囁いた………

.

集中治療室にアスラン・ザラを拘束した。
昔に比べ………柔軟な身体の動きをしていた………

………女………

そのもの

何人かの男は、あの白い肌に何十枚もの花びらを散らしたに違いない。
物欲しそうにひくつく花は、花芯を何本くわえたんだろう。

どんなに反抗的な態度になっても………

俺はお前………と………

扉の前で足を止めた。
ゆっくりと扉を押し開ける。

この娘を………

『来たな、サフィーラ………』

ザラから与えられたパイロットスーツを脱ぎ、綿のガウンに着替えたマドモアゼル・マリア………いや、エオリアがソファーから立ち上がった。

『具合は如何ですか?マドモアゼル』
『多少よくはなった………サフィーラ』

翠の瞳が俺を冷たく見つめる。

『薬が切れるギリギリに音波を流すとはどういう考えだ』
『申し訳ございません。ザラが貴方様を手放すものと考えていましたので。もしくは、貴方様を人質として再び………』
『………サフィーラ』

少女は成長を始めた身体をゆっくりと動かし、俺の身体に絡みつく。

『その………憎い男から聞いたぞ。寝る前のキスの仕方を………』

………俺が………動揺するとでも?

今、ここで宣言してもいい。

だが………楽しみは最後にとって置くほうが楽しい。

舞台に上がる人数も………

………彼女が聴かせる………

最高の独奏も

Velocity Night-07-につづく>>>





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